歯内・歯周・補綴治療の臨床判断
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1421.もっとも失敗のリスクが低い治療法はどれか? 再生療法は、その治療の経験と習熟度によって大きく結果が左右される。ここでは、特に再生療法の経験の少ない術者の視点で、対処の方法を検討してみよう。 再生療法の成否は『創部の閉鎖環境が維持できるか』に関係する。これは特に、治癒期間中(特に術後2週間)、欠損部分を被覆する歯肉(フラップ)への血液供給が常に十分かつ良好に行われているか否かにかかっている(図1)。そのため、術者の習熟度が低い場合には、単根歯で骨内欠損の面積が狭く、歯根間距離が広い(欠損を覆うフラップが大きい)症例を再生療法の対象として選択すべきである。 特にGTRを計画している際は、このことを十分に検討すべきである。骨面や欠損部をメンブレンで被覆するGTRは、骨欠損部への軟組織の侵入を遮断するだけでなくフラップへの血流も遮断することから、通常の骨移植やエムドゲイン療法などと比較して、さらに難易度は高くなるからだ。閉鎖環境を維持するためのフラップへの血液供給がフラップ自体からだけでは不可能と判断される症例においては、メンブレンの使用を避けるべきである。しかし、スペースメイキングがメンブレンなしには行えない場合には、線維芽細胞との生体親和度の高いコラーゲン製メンブレンを使用せざるを得ない。 これらに比較して切除療法では、フラップを薄くしすぎたためにフラップが壊死する場合を除いて、術式自体が失敗に陥るような合併症に遭遇するようなことは稀である。ただし、5mmを越えるような深いポケットに切除療法を用いると、歯肉形態の不調和を生じ、術後の清掃性に課題を残す場合もある。 したがって大きく分けると、水平性骨欠損や浅い骨内欠損には切除療法、深い骨内欠損には再生療法を用いると考える。ただし、大臼歯部のように根分岐部が存在する場合にはさらに精査が必要となる。歯石骨移植材メンブレンGTR切除療法骨移植エムドゲイン療法易難難易度フラップへの血流少多血液供給図1 フラップと骨面のあいだに介在物が多かったり密度が高くなるほど、フラップへの根面からの血液供給が低下し、閉鎖環境を保つことが困難となり、治療術式としては難易度が高くなる。【図1 治癒の種類と難易度】

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