生体と調和する歯周組織にやさしい歯冠修復物
4/6

ジャーの大きさも不規則な歯列、歯周治療後に大きく歯肉が退縮しているケースなどが多いのも現実であり、われわれ歯科技工士の知識と技術でそこをカバーする必要もでてくる(図F)。 このように患者ごとに異なるさまざまな条件下で「歯周組織にやさしい歯冠修復物」の条件を達成するには、歯科技工士としてどのようなノウハウが必要か?本書では、それを「歯周組織」「力」に分けて解説するとともに、チェアサイドからの生体情報をどう歯科技工に生かすかのノウハウを提示してみたい。2)歯周組織への力の影響を防ぐ歯冠修復物とは 図E①、②に示すのは咬合の影響により歯肉退縮を起こした歯冠修復物である。この症例は、歯冠修復治療後に患者がリコールに応じず必要な咬合調整ができなかったという。結果、咬合接触点の拡大変化から咬合力増大、そして部分的な過重負担が起きた。装着から12年後には歯肉退縮を起こしている。力のコントロールがいかに重要かを理解できる症例である。 しかしながら、生物学的幅径が保たれていないケース、捻転歯や歯列不正、歯頸線が不揃いで、エンブレ156図F⑥ 上下修復物の口腔内装着(症例提供A)。図F⑤ 審美領域の前歯部でも清掃性を重視し、わずかにエンブレジャーを空けて製作した歯冠修復物。図F① 術前(54歳・男性)、中等度の歯周病で歯周外科を患者が拒否したため、スケーリング・ルートプレニングのみの治療後、上下顎を全顎的に修復した。術前、不規則なエンブレジャーの形態が観察された。234図F②~④ 術前の上顎エックス線。骨レベルや歯頸線は不揃いである。1図E① 1996年4月、上下全顎的に歯冠修復。歯冠修復物口腔内装着直後の状態。図E② 2008年にの痛みで再来院。そこまで患者は1998年以後10年間まったくリコールに応じなかった。歯冠修復物を口腔内装着後12年経過で歯肉退縮が起きている(症例提供A)。2図E①、②歯肉退縮が起きた例から経年的な力の影響を痛感できる図F①~⑥現実には生物学的幅径は保たれていない症例が圧倒的に多いからこそ、歯科技工士の知識と技術の出番がある

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer9以上が必要です