口腔外科ハンドマニュアル’14
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Chapter-PARADIGM SHIFT OF DENTAL SURGERY FOR 10YEARS LATER11巻頭アトラス 10年先を見据えて 口腔外科医療のパラダイムシフト特集1:口腔がん ─早期発見とその対応はすべての歯科医師の責務である─エビデンスに基づいた口腔がん治療を行うためにATLASATLAS がんは口腔に原発した場合においても,その発症機序や進展形式などの病態から全身病としての対応が必要である.さらに,がん治療には科学的根拠(EBM)に基づいた治療が求められる.現在,世界的にもっとも頻用されているガイドラインは,全米を代表する21のがんセンターで結成されたNCCN(National Comprehensive Cancer Network)によって策定されたものである.また,本邦では日本口腔腫瘍学会 口腔癌治療ガイドライン改訂委員会/日本口腔外科学会 口腔癌診療ガイドライン策定委員会 合同委員 編『科学的根拠に基づく口腔癌診療ガイドライン』1が刊行されている.両者ともに治療のアルゴリズムが巻頭に示されている.『口腔癌診療ガイドライン』は,国内で行われている治療法が網羅されている.両ガイドラインとも利用する場合には,治療法のエビデンスレベルを確認することが重要である.ガイドラインに示される治療法のうち,もっともエビデンスレベルが高い治療法を標準治療という.ここでいう標準治療とは,いわゆる“一般的に行われている治療法”ではなく,第Ⅲ相臨床試験である“ランダム化比較試験(RCT: randomized control trial)を経て確立された治療法”をいう.現在までに国内においてRCTによって確立された治療法は見あたらない.とくにがん治療においては,標準治療とされていない治療法は臨床試験(研究)として取り扱われるべきとされている. 本稿では,ガイドラインを基本として現在行われている口腔がん治療と,さらに臨床研究,臨床試験について述べ,口腔がん治療の近未来について考察する.手術療法ATLASATLAS 口腔がん一次症例の初回治療は原則として手術である.がん治療に対する切除手術においてもっとも重要視されるのは根治性の確保である.さらに現在では機能温存,形態温存に関して根治性との両立が可能となってきている.太田嘉英東海大学医学部外科学系口腔外科学領域連絡先:〒259‐1193 神奈川県伊勢原市下糟谷143Current Therapy for Oral CancerYoshihide OtaDepartment of Oral and Maxillofacial Surgery, Division of Surgery, Tokai University, School of Medicine.address:143, Shimokasuya, Isehara-shi, Kanagawa 259-1193口腔がん治療の現状と展望19

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