口腔外科ハンドマニュアル’14
3/8

Chapter-PARADIGM SHIFT OF DENTAL SURGERY FOR 10YEARS LATER11巻頭アトラス 10年先を見据えて 口腔外科医療のパラダイムシフト特集1:口腔がん ─早期発見とその対応はすべての歯科医師の責務である─ 口腔機能として構音,咀嚼,嚥下が挙げられるが,そのなかで咀嚼は食事を味わい楽しむために重要であり,食事は人生においても大きな喜びであるとともに文化的な営みでもある.食物を咀嚼するためには,歯のみではなく,舌,頬粘膜,口唇などの周囲組織の複雑な協調運動が必要となる.本稿では,私たち口腔外科医が行う咀嚼機能の回復について述べる.再建法についてATLASATLAS 口腔がん切除後に機能と形態の回復のために使用される再建材料は有茎皮弁と遊離皮弁の2つに大きく分けられる.有茎皮弁としては大胸筋皮弁,広背筋皮弁,胸三角筋部皮弁(DP皮弁)などがあり,これらの大型皮弁の開発により1970年代後半より頭頸部進行がんの拡大切除,即時再建が可能となった.1980年代に入りマイクロサージェリーを用いた遊離組織移植による口腔再建が始まり,現在では遊離組織移植が口腔再建の第一選択となっている.汎用されている遊離皮弁は,軟組織再建材料としては前腕皮弁(図1,2),腹直筋皮弁(図3),前外側大腿皮弁(図4),広背筋皮弁(図5)が挙げられる. 一方,硬組織の再建としては,腓骨,肩甲骨,腸骨が使用される.また,チタンメッシュと自家腸骨海面骨細片(PCBM)を用いた顎骨再建1,2は理想的な顎骨形態の作製が可能で,前腕皮弁を組み合わせて顎骨と口腔粘膜欠損の再建を行う術式も選択される. とくに,ここでは当科における腓骨による下顎再建法について述べる.当科では下顎骨の再建には腓骨を第一選択として使用している.腓骨は20cm以上の長さの骨が採取可能であり,同時に挙上できる皮弁は前腕皮弁のように薄くしなやかであることが利点として挙げられる.切除前の下顎骨の形態に合わせた再建用プレートの内側に適合するように数か所で骨切りを行い,スクリューで固定する.つぎに皮弁は,再建した腓骨の外側を通し口腔内に移動させることで,皮弁に緊張をかけ舌房を確保し,さらに腓骨上を覆う皮弁が薄くなり,義歯の製作を容易にできる.したがって血管茎の位置,皮弁の配置の関係から基本的に患側の腓骨を採取することになる小林 恒弘前大学大学院医学研究科医科学専攻歯科口腔外科学講座連絡先:〒036‐8562 青森県弘前市在府町5Reconstructive Surgery and Oral Rehabilitation for Oral Cancer:A Future ViewWataru KobayashiDepartment of Dentistry and Oral Surgery, Hirosaki University Graduate School of Medicineaddress:5, Zaifu-cho, Hirosaki-shi, Aomori 036-8562口腔がんの再建外科手術と口腔機能回復 今後の展望30

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer9以上が必要です