口腔外科ハンドマニュアル’14
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Chapter-PARADIGM SHIFT OF DENTAL SURGERY FOR 10YEARS LATER11口腔がんの再建外科手術と口腔機能回復 今後の展望舌半側切除までであれば咀嚼機能は良好に保たれるが,それ以上の切除になると機能低下が認められる3.残存舌の機能がある程度期待できるものの,残存歯がないため,義歯の安定が得られない顎堤に対してインプラント義歯は有用である. 2012年4月より口腔外科的疾患の治療後のインプラント治療(広範囲顎骨支持型装置)が保険適応となった.これにより従来であれば経済的問題によりインプラント義歯をあきらめていた患者も,これらの恩恵を被ることができるようになった.又賀4によると,腓骨皮弁により再建した顎骨に植立したインプラントの10年後の残存率は92%であり,長期的にも骨の吸収がなく安定した義歯の固定源が求められ,審美的のみならず咀嚼,構音など機能的にも有用であると報告している.しかし,インプラント義歯を装着することで咬合力の回復が得られたとしても,舌切除量が多いと咀嚼構音機能は低下する5~7.咬合面に食塊を運ぶためには舌と頬粘膜の協調作業が重要であり,広範な切除,とくに舌亜全摘以上に切除された場合には食塊を咬合面上に維持できず,いかにインプラント義歯を応用しても咀嚼機能の回復は難しいといえる.今回のテーマとは異なるが,下顎良性腫瘍切除後の再建の場合には周囲組織の欠損が小さいため,インプラント義歯を適応することで術前とほぼ同様の咀嚼機能を得ることができる(図8).図7a~d 下顎歯肉がんに対して下顎骨区域切除後に腓骨により再建した症例(46歳,男性 T4N2bM0 化学放射線治療後腫瘍残存症例.図6とは別の症例).2か所骨切りを行い下顎骨のアーチを再現することで,比較的左右対称な顎骨の再建が可能である.a:術直後のパノラマエックス線写真.b:頭部エックス線写真.c:義歯装着前の口腔内.皮弁も薄く再建顎骨に密着しているため二次修正する必要はない.d:義歯装着時の口腔内.残存歯を鉤歯として利用できるため,通常の義歯が装着可能である.cdab33

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