口腔外科ハンドマニュアル’14
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Chapter-PARADIGM SHIFT OF DENTAL SURGERY FOR 10YEARS LATER13巻頭アトラス 10年先を見据えて 口腔外科医療のパラダイムシフト特集3:埋伏智歯の抜歯術を再考する ─求められる知識とテクニック─ 下顎智歯抜歯後の下歯槽神経障害の頻度は0.4~8.4%と報告され,永久的障害は1%以下と海外の論文では報告されている1~3. 麻痺発現の原因としては解剖学的に根尖と下顎管とが近接しているため,抜歯の際,歯根や骨片による圧迫や,ヘーベル,バー,鋭匙などによる下歯槽神経損傷をきたしやすいことが挙げられる.この神経障害を回避するには,術前の画像診断能力と適切な手術手技が求められる. 画像診断については,歯科医療においてコーンビームCT(CBCT)が急速に普及しつつある.このCBCTは,硬組織を主に対象として高い解像度を有し,しかも条件つきではあるが低い被曝線量にて,下顎管に近接する埋伏歯の状況を判断するためにも非常に有用である. 一方,下顎管に近接する埋伏歯の抜歯手術手技については,2回法抜歯術,歯冠切除術,歯科矯正治療の応用術など,これまでいろいろな工夫された術式の報告があり,どれもすばらしい術式ではあるが,それらの術式では不可能な症例も実際存在する. 本稿では新しい術式を供覧しつつ,複雑な手技を要する難抜歯について述べる.また,下顎枝内に埋伏する抜歯がきわめて困難とされる智歯についてもふれてみる.解剖ATLASATLAS 外科学にとって,解剖学は最重要分野である.当然個々によってバリエーションは存在するが,下顎管の顎骨内での位置など,まずは標準的な解剖を把握する必要がある. 下顎管の顎骨内の経過として,側方よりみると,下顎孔より下顎底に対し約150°の角度をもって下前方に向かい,第二大臼歯根尖端の下方6mm前後に達する.ここで通常屈曲して前方に方向を変える.そして,下顎底とほぼ平行して下顎体の下1/3のところを第二小臼歯の下方まで,水平でわずかに上方へ経過する(図1).また,下顎管の経過を上方よりみると,下顎孔より第一大臼歯または第二大臼歯までは内板に沿って,下顎骨体の頬舌径の舌側1/3のところを経過し,それより方向を外方に向け,第二小臼歯部ではほぼ中央を経過する.そして第一小佐藤豊彦1/朝波惣一郎21 独立行政法人地域医療機能推進機構船橋中央病院歯科口腔外科 連絡先:〒273‐8556 千葉県船橋市海神6‐13‐102 国際医療福祉大学三田病院歯科口腔外科 連絡先:〒108‐8329 東京都港区三田1‐4‐3The Complicated Extraction Which Needs A Complex Procedure:①Closely Related Impacted Tooth to the Mandibular CanalToyohiko Sato1, Soichiro Asanami21 Department of Oral and Maxillofacial Surgery, Japan Community Health Care Organization Funabashi Central Hospital address:6-13-10, Kaijin, Funabashi-shi, Chiba 273-85562 Department of Oral Surgery, International University of Health and Welfare Mita Hospital address:1-4-3, Mita, Minato-ku, Tokyo 108-8329複雑な手技を要する難抜歯①下顎管に接している埋伏歯102

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