新しいNi-Ti製ファイルの歯内療法
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Part 2私の“Single Patient Use”&“シングルファイル”の臨床応用Ni-Ti製ファイルによる根管形成の進化11)進化した根管形成概念 超弾性と形状記憶性を特徴とするNi-Ti製ファイルは,根管形成方法をスタンダード根管形成法(根尖側から歯冠側方向に行う形成法)やステップバック法からクラウンダウン法に変化させた.スタンダード法では根管形成開始前に正確な根管長測定を必要としたが,クラウンダウン法では根管長測定を先送りし,コロナルフレアー(根管口付近のフレアー形成)終了後,正確な根管長測定後に根尖側1/3の最終根管形成を行う. クラウンダウン法は本来,フレアーアップ(再燃化,急性転化)防止の目的で考案された根管形成法であった.感染根管治療の根管拡大および根管形成時に切削片を不用意に根尖孔外の歯周組織に押しだしたために静止期の根管内細菌が根尖孔外で増殖し,急激な炎症症状を呈することがある.フレアーアップを惹起した根管は治癒が遅れ,患者の不快症状だけでなく術者の信用まで失墜させてしまう.これらフレアーアップの原因はリーマーやファイルを使用する際に切削片を根尖孔外の歯周組織に押しだす根管形成そのものに問題があると考えられてきた.そこで,フレアーアップを防止する根管形成法として,十分な根管上部のフレアー形成と作業長の決定を先送りし,根尖部,根管内の感染歯質や壊死物質を根尖孔外の歯周組織に押しださないように留意する根管形成法としてクラウンダウン法(図1)が誕生した. Ni-Ti製ファイルはNi-Ti合金のもつ超弾性を発揮することにより,本来の根管形態を破壊することなく根管形成を行うことが可能になったが,超弾性ゆえに切削効率はステンレススチール製より劣っていた.しかしながら,切削効率の劣勢をテーパーの増加とエンジン駆動型のNi-Ti製ロータリーシステムに組み込むことにより切削効率の向上をはかることに成功した.Ni-Ti製ファイルが有するテーパー歯内療法の劇的な進化の視点から石井信之神奈川歯科大学大学院歯髄生物学講座連絡先〒238‐8580 神奈川県横須賀市稲岡町82034

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