新しいNi-Ti製ファイルの歯内療法
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Part 5これからの歯内療法を占う Ni-Ti合金の利点が,柔軟性,あるいは応力解放で原形に復帰する性質であることは周知のとおりである.実際,根尖部でのトランスポーテーション(apical transportation)を回避する性能については,多数の研究からNi-Ti製ファイルの優位性は確立されており,とりわけ#30以上の器具ではステンレススチール製ファイルとの差が顕著とされる1.これが,エンジン駆動による効率性とともに,Ni-Ti製ファイルの今日の隆盛を支持する大きい根拠となっている. 一方,Ni-Ti合金の最大の問題は,周知のとおり破折抵抗性がステンレススチールに及ばない点である.また,Ni-Ti製ファイルはエンジン駆動で切削効率が確保されているが,本来は鋭利な刃の加工が難しく切れ味に劣る器具といえる. Ni-Ti合金の根管形成への応用を示唆した最初の報告は1975年に遡る2.その後,1988年にNi-Ti製ファイルの柔軟性や破折強度に関する最初の具体的研究成果が提示されたのち3,改良を重ねながら90年代半ばから急速に普及するに至った.この開発史の多くの部分が破折抵抗性と効率性の改善にあてられているといっても過言でない. 本稿では以下,Ni-Ti製ファイルの変遷4,5を振り返りながら現在の潮流を考えてみたい.ただし,限られた誌面での詳述は不可能であるため,いくつかの端的な傾向について言及したい.Ni-Ti製ファイルの潮流と展望Ni-Ti製ファイルvsステンレススチール製ファイルNi-Ti製ファイルの開発史興地隆史新潟大学大学院医歯学総合研究科口腔健康科学講座う蝕学分野連絡先〒951‐8514 新潟県新潟市中央区学校町通2番町5274152

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