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43炎症/智歯周囲炎Chapter1ロキソプロフェンナトリウム(ロキソニ ン®)1錠60㎎ 1回1錠 疼痛時 頓用 4回分妊娠・授乳婦アモキシシリン水和物(サワシリン®)1カプセル250㎎ 1回1カプセル 1日3回 毎食後 3日分アセトアミノフェン(カロナール®)1錠300㎎ 1回2錠 疼痛時 頓用 4回分投薬の背景 智歯周囲炎とは,智歯周囲組織に起こる歯性感染症で発現頻度は高く,上顎より下顎に多い.智歯の萌出はその解剖学的部位により,しばしば不完全萌出や萌出方向異常を生じる.このため,わずかに露出した歯冠部以外は粘膜で覆われ,深いポケットが形成される.この部位は食物の停滞や清掃が困難なことから細菌増殖に適した環境となる.また,咀嚼時のポケットへの食片圧入や対合智歯の挺出による被覆粘膜への傷害により周囲粘膜に炎症が生じやすい.ときには,糖尿病などの易感染者に急性症状を呈する.さらにこの部位の炎症は周囲組織へ波及しやすく,腫脹や疼痛による嚥下困難,開口障害による摂食困難をきたし,全身症状を悪化させることがある.とくに,顎下隙,舌下隙,翼突下顎隙,側咽頭隙に拡大すると重篤となるので注意を要する.急性症状の対応としては,局所の安静を図るための洗浄,膿瘍の形成を認めた場合の切開排膿,病巣を刺激する対合咬頭の削合などを行い,同時に消炎鎮痛薬や抗菌薬を投与する.症状改善後,原因歯の抜歯が望まれる.投薬のポイント 鎮痛薬による疼痛軽減と,智歯周囲の感染制御のため,抗菌薬を用いて炎症反応を抑えることが大切である.起炎菌は口腔レンサ球菌や嫌気性菌(ペプトストレプトコッカス属,プレボテラ属など)の混合感染症であることが多い.このため広域性で殺菌力の強いペニシリン系,セフェム系を第1選択として投与量は3日間を目安とする.投与48時間を経過しても症状の改善がみられない場合は混合感染を疑い,マクロライド系に変更する. 疼痛に関しては鎮痛作用が強く,消化器症状の少ない非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)ロキソプロフェンナトリウムを選択する.これら薬剤の投与にはアレルギーの既往,全身疾患の有無を問診により確実に把握しておくことが大切である.見逃せない副作用,相互作用 ペニシリンショックの既往歴やアレルギーのある場合には,β-ラクタム系のセフェム系抗菌薬の投与は避けるべきである. クラリスロマイシンは,併用禁忌や併用注意薬があり確認が必要となる.また長期投与では,肝機能障害を来す危険性もある.ニューキノロン系抗菌薬はNSAIDsとの併用で痙れん誘発作用を増強する可能性に留意する.

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