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93口腔粘膜疾患/黒毛舌Chapter3し,その表面や間隙に貯留した舌苔に含まれる細菌が産出した黒色,黒褐色の色素が沈着した状態をいう.着色の状態は喫煙や食品などの外来性色素により影響される.症状は舌背中央から後方にかけての著明な毛状で黒褐色の変化として認められることが多く,疼痛などの自覚症状はない.ときに口臭,不快感,味覚障害などを認めることがある.原因は,①抗菌薬や副腎皮質ステロイド薬の長期の内服,同成分を含む口腔内軟膏やトローチの使用による口腔内の菌交代現象,②唾液の分泌低下や器質的障害による口腔内の自浄作用の低下,③摂食障害などによる舌運動の低下,などが複合的に関与している.とくに口腔内常在菌叢が菌交代現象によるカンジダ菌,枯草菌など増殖が着色に関与していると報告されている.さらに消化管障害・糖尿病,タバコ・飲食物中の色素,鉄剤などの薬物なども着色の原因になるといわれている.診断は臨床所見と既往歴から容易であり,鑑別疾患はとくにない. 菌交代現象からカンジダ症を合併していることがあるので,症状が遷延する場合には患部を擦過して真菌培養検査を行うことが必要である.投薬のポイント 治療の基本は口腔衛生状態と口腔乾燥の改善である.含嗽薬の使用とともに,通常の口腔清掃指導と舌ブラシなどによる舌背部の清掃指導を行う.また,口腔乾燥が認められる場合には口腔湿潤剤を併用する.カンジダ症を併発している場合は合わせて抗真菌薬の投与を行う必要がある(カンジダ症の項を参照). 黒毛舌の原因と考えられる薬物が使用されている場合,その投与を中止するか否かの判断は対診により主治医に委ねて,歯科医師は上記に述べてきた対応で症状の改善を図るべきである.見逃せない副作用,相互作用 使用する含嗽薬で重篤な副作用や相互作用が起こることはきわめて稀であるが,ヨードアレルギーの既往がある患者にはポビドンヨード液は禁忌である.また,いずれの含嗽薬も使用により口唇,口腔や咽頭粘膜に掻痒感,浮腫など過敏症の症状が認められた場合にはただちに使用を中止する.黒毛舌.

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