総義歯治療 失敗回避のためのポイント45
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36第1部 診断編Ⅰ 心理的影響への配慮と事前の信頼関係補綴治療においても,MIの観点から可及的に歯は保存するべきです.もちろん,フルマウスリコンストラクションにおいては予知性の低い歯の抜歯が必要な場合もありますが,痛みや炎症所見のない歯を安易に抜くことは厳に慎まなくてはなりません.とくに少数歯残存から無歯顎に移行する際には,患者に与える心理的影響にも十分配慮して,事前の信頼関係の構築と総義歯に踏み込むメリットの説明が重要です.Ⅰ 心理的影響への配慮と事前のⅡ 義歯の維持安定を得にくい場合切歯や大臼歯が単独で残存している場合など,クラスプデンチャーの維持安定が十分に得られないときがあります.レストを中心にして義歯が回転する現象を通常のクラスプでは抑制しきれないケースです.このような場合には,テレスコープデンチャーで対応する方法もありますが,抜歯して総義歯に踏み込むことで比較的容易に良好な維持安定を得ることができます.歯が残存しているときには義歯着脱方向の問題でアンダーカットになってしまっていた顎堤も,総義歯にすると維持安定のために有効に活用できます.とくに上顎の場合には,総義歯に踏み込むことで義歯の維持安定が著しく向上Ⅱ 義歯の維持安定を得にくい場合Diagnostic Edition 6総義歯に踏み込む症例とは~歯を残すデメリットを患者にわかってもらう~図1-6-1a, b 上下顎残存歯の配置のためにクラスプデンチャーの安定を得られなかった症例.上顎総義歯に踏み込んだことで,義歯の安定は改善された.●総義歯にして安定した症例ab

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