総義歯治療 失敗回避のためのポイント45
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156第3部 メインテナンス編Ⅰ 咬傷の原因新製義歯で,頬粘膜や舌縁部に咬傷を生じている場合があります.傷のできた頬や舌の位置から,原因歯の咬合関係を推定します.義歯による咬傷にはいくつかの原因が考えられます.1.臼歯部における水平被蓋の不足臼歯部の咬合状態を前頭断でみると,上顎歯の頬側咬頭が下顎歯より半咬頭頬側にずれています.それは,上顎舌側咬頭が機能咬頭として,下顎臼歯の咬合面中央に咬合することで,効率良く咬合力を発揮することができるためと,上下顎臼歯の半咬頭のずれによって咀嚼運動時に頬を咬むことを回避しているからです.このような基本的な上下顎の咬合関係から逸脱した咬合関係になると,頬や舌を咬むことにⅠ 咬傷の原因なります(図3-4-1).2.義歯頬側研磨面形態の不良義歯床後縁部の長さに過不足がある場合や,頬側研磨面の豊隆が不足している場合,人工歯が義歯床よりも外側に位置することになり,頬粘膜を巻き込みやすく,頬を咬むことになります.3.臼歯部の頬舌的排列位置に問題がある場合下顎臼歯部の人工歯排列位置が頬側に寄りすぎている場合は頬を咬みやすく,舌側に寄りすぎて舌房が狭い場合は,舌を咬みやすいことがあります.4.咬合高径が低すぎる場合咬合高径が低すぎる場合,人工歯や義歯床でMaintenance Edition 4粘膜を咬んでしまうと言われたら図3-4-1a, b チークバイト.臼歯部頬側の水平被蓋の不足により生じた頬粘膜の咬傷.もう少し被蓋がほしい症例である.●頬粘膜の咬傷ab

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