ザ・クリニカルデンティストリー
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289治療結果への自己評価■臨床症状の消失が得られ,デンタルエックス線写真的にも経過は良好である.また,術後のプロービング値は安定しており,歯として正常に機能している.■術式に関して,口腔内からの歯根端切除術も考慮したが,複根歯であること,さらに患者の前庭は浅く,口唇圧も強いことから,器具の到達性が困難であることが予想されたため,口腔外で確実に根尖の汚染物を除去できる意図的再植術を選択した.結果的に穿孔部が存在していたことからも本術式の選択は妥当だったと考えている.■充填材料には湿潤状態で硬化するという利点をもつMTAセメントを使用した.■再植時に患歯の安定を優先するため,隣在歯とワイヤーで固定を行い,固定期間は2か月とした.アンキローシスの可能性について慎重に経過を追っているが,現在までのところ打診音は正常であり,歯の動揺も生理的範囲内である.引き続き今後の経過観察が必要である.治療の課題Q1 再植時の固定期間および方法 固定期間はどれくらい必要か,固定の方法は適当か,検討したい.Q2 経過観察時のチェックポイント アンキローシスが起きたら早期に介入できるよう,経過観察時にどの点に気をつけたらよいか,検討したい.治療の評価と課題間島 徹香川県・マシマ歯科クリニック われわれの歯科臨床で外科処置が必須になる症例ももちろんある.しかし,外科処置には必ず外科的侵襲がともない,それによって歯槽骨の吸収が少なからず起こることは周知の事実である.このことから,外科処置によって得られる利益がそのリスクを上回るときにのみ外科処置の選択をしなければならない.エンドの分野でも,エンドサージェリーや意図的再植の場合には同様の判断が必要である. このエンドの症例を難治症例にしている要素が2つある.1つ目は,この歯が複根で根管系も複雑なために,再度の根管治療にもかかわらず根尖付近の根管清掃が困難な状態であったこと.2つ目は,抜去後に歯の精査でわかった歯根中央部の穿孔である.この2つの解決のために,通常のエンドサージェリーの頬側からのアプローチでは,舌側の根中央部にあった穿孔部には視診もアクセスも不可能なため,この症例での意図的再植の選択は適切であったといえる.A1 通常の固定は1〜2か月 意図的再植で抜歯した歯を回転せずにそのまま抜歯窩に戻す場合の固定期間は,最小限でよいと思われる.もちろん骨欠損の程度や,その歯の動揺度の状態によって固定期間を延長しないといけない場合もあるが,通常は1,2か月あれば十分と思われる. 固定方法は,患者に違和感がないようにし,見えるところはできれば審美性も考慮してあげたい.この症例ではワイヤーで隣在歯と固定したが,見えるところでもあるので,プロビジョナルクラウンを装着して矯正用の接着レジンでの隣在歯との簡易な固定でもよかったと思われる.A2 動揺度と歯の黒変をフォロー 定期的にまず動揺度を確認し,固定をはずすタイミングを計る.プロービングは,付着の確立と治癒を確認する時期まで待たなければならない.この症例では,金属腐蝕が疑われる歯の黒変が歯頸部の広範囲で見られる.その拡大をこれ以上にしないためには,可及的に黒色歯質を除去し,既成金属ポストの使用は最終補綴では避けるべきである.そして頬小帯の付着が高位にあるのでメインテナンスでフォローが必要であろう.JIADS講師からの示唆吉川宏一京都府・吉川デンタルクリニック

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