日本審美歯科協会30年の歩み
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欠損部へのインプラントの応用Part23水上哲也Tetsuya Mizukami福岡県開業 水上歯科クリニック連絡先:〒811‐3217 福岡県福津市中央5‐1‐21. 欠損部へのインプラントの応用:私はこう考える 抜歯後ただちに欠損部歯槽堤が吸収することは古くから知られている現象であり,後に行われるインプラント治療の条件を不利にさせ,治療期間も延長させる.これらの状況を改善し,なおかつ治療期間を短縮する目的で抜歯後即時埋入インプラントやソケットプリザベーションが行われてきた. 現在では,抜歯後ただちにインプラントを埋入しても,あるいはソケットプリザベーションを行っても,抜歯部の骨吸収を完全に防ぐことはできないと考えられている.またソケットプリザベーションは当初治療期間の短縮を得ることができるものと期待されていたが,実際の臨床ではプリザベーション後の骨の再生には期間を有し,追加的な骨造成がしばしば必要となることから,治療期間は必ずしも短縮されるとはいえない. また,ソケットプリザベーションにより作られた再生組織は不確実で,一定期間後も骨補填材料が軟組織に取り囲まれていることをしばしば経験する.このようなケースでは,抜歯後あえてプリザベーションを行わず,6~8週後粘膜の治癒を待ち,改めて骨造成を行うほうが有利と思われる. ソケットプリザベーションのメリットを活かせる症例としては,① 下歯槽管や上顎洞底との距離が近く,プリザベーションを行うことでリスクを軽減できる場合② 審美性が要求される部位において,歯肉ラインの調和を達成する必要がある場合などが挙げられる. また,プリザベーションの手法としては,3-3 CASE PRESENTATIONソケットプリザベーションを用いたインプラント審美修復図1 ₄₅抜歯後,抜歯窩の軟組織を徹底的に除去した後に骨補填材を填入した.この後コラーゲンシートを設置したうえでレジンポンティックにて抜歯窩を封鎖した.図2 追加的な骨造成を行うことなくインプラントが埋入された.埋入後,粘膜が治癒したところ.軟組織は高さを失っておらず,自然感のある歯肉が達成できるものと期待される.12106

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