TMD YEARBOOK 2014
3/6

121章 最新のエビデンスから学ぶTMDの診断基準:DC/TMD論文の翻訳と解説別冊the Quintessence 「TMD YEARBOOK 2014」12臨床および研究向けのTMDの診断基準(DC/TMD):国際RDC/TMDコンソーシアムネットワークおよび国際疼痛学会口腔顔面痛グループの推奨抄録目的:研究用のTMD診断基準(RDC/TMD)Ⅰ軸診断アルゴリズムには信頼性があることが示されてきた.しかし,妥当性検討プロジェクトaによって,感度b 0.70以上かつ特異度c 0.95以上という目標を下回っていることがわかった.その結果,RDC/TMDのⅠ軸診断アルゴリズムが改訂され,もっとも頻度の高い疼痛関連TMDdeと関節内の障害の1つへの妥当性が示された.RDC/TMDのⅡ軸インストゥルメント(instruments)については,その信頼性と妥当性が認められた.これらの所見と改訂を受けて国際コンセンサスワークショップが2回開催され,新規Ⅰ軸診断アルゴリズムおよび新規Ⅱ軸インストゥルメントがとりまとめられた.方法:一連のワークショップおよびシンポジウムを通して,臨床・基礎の疼痛領域のエキスパートパネルが詳細な文献検索およびレビューを行い,正式なプロセスを経てコンセンサスを得たうえで,改訂RDC/TMDのⅠ軸診断アルゴリズムを修正した.さらに,妥当性検討プロジェクトaのデータで妥当性を検討し,TMJインパクトプロジェクトfで新たに収集したデータで信頼性を検討した.新規Ⅱ軸インストゥルメントには,RDC/TMDと比較して短く,版権がなく,医療現場で現在用いられているもので,妥当性のあるものを選択した.結果:新規に推奨されたDC/TMDのⅠ軸プロトコールには,疼痛関連TMDeを検出するための妥当性のあるスクリーニングインストゥルメント,もっとも頻度の高い疼痛関連TMDde(感度b 0.86以上,特異度c 0.98以上)と関節内の障害の1つ(感度b 0.80,特異度c 0.97)を鑑別するための妥当性のある診断基準が用意されている.その他の頻度の高い関節内の障害の診断基準については,臨床診断のための妥当性を欠くものの,スクリーニングとしては用いることができる.妥当性が検証された疼痛関連TMDeに関するDC/TMDによる臨床評価については,診察者間の信頼性はたいへん良好である(一致度[カッパ係数g]0.85以上).最後に,頻度の高いTMDと頻度の低いTMDの両者を含む拡大TMD分類h(Expanded TMD Taxonomy)も示されている.Ⅱ軸プロトコールには,RDC/TMDから選び抜かれたスクリーニングインストゥルメントに加えて,顎機能,行動学的因子,心理社会的因子を評価するための新しいインストゥルメントが準備されている.Ⅱ軸プロトコールは自記式インストゥルメントのセットで構成されており,スクリーニング用のセットと詳細な評価のためのセットの2種類がある.スクリーニング用のインストゥルメントには41の質問があり,痛み強度,疼痛関連障害,心理的苦痛,顎機能の制限,パラファンクションを評価し,痛み部位を確認するための痛み部位の描記(pain drawing)を用いる.詳細なインストゥルメントには81の質問があり,さらに詳細な顎機能制限と心理的苦痛のほかに,不安や併存する痛みについても評価する.結論:エビデンスに基づいて作成され,今回新規に推奨されるDC/TMDは,臨床と研究の両方の場面で適切に用いることができる.Ⅰ軸およびⅡ軸評価のための短く簡単なスクリーニングインストゥルメントがあり,さらに,これを補足・補強するためにより詳細なインストゥルメントも用意されている.これらの妥当性が検証されたインストゥルメントを用いることで,単純な状態から複雑な状態までの広い範囲のTMD患者の評価が可能である.キーワード:診断基準,診断の信頼性,診断の妥当性,感度b,特異度c,TMD(顎関節症)Eric Schiffman, DDS, MSRichard Ohrbach, DDS, PhDEdmond Truelove, DDS, MSDJohn Look, DDS, PhDGary Anderson, DDS, MSJean-Paul Goulet, DDS, MSDThomas List, DDS, Odont DrPeter Svensson, DDS, PhD, Dr OdontYoly Gonzalez, DDS, MS, MPHFrank Lobbezoo, DDS, PhDAmbra Michelotti, DDSSharon L. Brooks, DDS, MSWerner Ceusters, MDMark Drangsholt, DDS, PhDDominik Ettlin, MD, DDSCharly Gaul, MDLouis J. Goldberg, DDS, PhDJennifer A. Haythornthwaite, PhDLars Hollender, DDS, Odont DrRigmor Jensen, MD, PhDMike T. John, DDS, PhDAntoon De Laat, DDS, PhDReny de Leeuw, DDS, PhDWilliam Maixner, DDS, PhDMarylee van der Meulen, PhDGreg M. Murray, MDS, PhDDonald R. Nixdorf, DDS, MSSandro Palla, Dr Med DentArne Petersson, DDS, Odont DrPaul Pionchon, DDS, PhDBarry Smith, PhDCorine M. Visscher, PT, PhDJoanna Zakrzewska, MD, FDSRCSISamuel F. Dworkin, DDS, PhDCorrespondence to: Dr Eric SchiffmanDepartment of Diagnostic and Biological Sciences6-320 Moos TowerSchool of DentistryUniversity of MinnesotaMinneapolis, MN, USA 55455Fax: (612) 626-0138Email: schif001@umn.edu著者の所属は論文末(38~39ページ)に掲載【翻訳者および解説文執筆】築山能大/古谷野 潔九州大学大学院歯学研究院口腔機能修復学講座インプラント・義歯補綴学分野〒812‐8582 福岡県福岡市東区馬出3‐1‐1Diagnostic Criteria for Temporo-mandibular Disorders(DC/TMD)for Clinical and Research Appli-cations:Recommendations of theInternational RDC/TMD Consor-tium Network and Orofacial Pain Special Interest GroupFrom「Journal of Oral & Facial Pain and Headache」Vol 28, No1 Winter 2014 Page6-27翻訳者脚注:本論文中,a~oのアルファベットの上付き文字で示された用語は,訳者によって論文末(40ページ)に用語解説が掲載されている.

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer9以上が必要です