誰もが遭遇するインプラント補綴の合併症
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セメント固定式上部構造に関するシステマティックレビューでは、メタルセラミッククラウン、ジルコニアクラウンともにチッピングは頻繁にみられる合併症で、単独冠およびブリッジにおいて比較的高率に発生する1)。文献的には天然歯の補綴装置に比較してインプラント支持型補綴装置のチッピングは頻度が高く、そのリスク因子もある程度明らかにされている(表3-1)2)。また、チッピングは補綴装置の種類や使用材料により原因や傾向が異なる(表3-2、図3-1~4)。 また近年、ジルコニアを用いたオールセラミッククラウンのインプラント臨床頻度が高まるにつれて、チッピングは以前にも増して初期合併症として注目を集めている。巷では「ジルコニアを用いた上部構造は破折しやすい」との声を聴くが、これは厳密には「ジルコニアをコーピングとしたオールセラミック冠の前装陶材部分がチッピングしやすい」の誤りである。ジルコニアのコーピングは高強度で、それ自体の破折が合併症として大きな問題を惹起したという報告はほとんど見られない。ただし、ブリッジの場合にはコネクター部分からの破折やベニア陶材の大きなクラックなどの報告もある。ベニア陶材のチッピング3-1表3-1 PFM(メタルセラミッククラウン)のチッピングのリスク因子とその度合(文献2より引用・改変)*実際の臨床ではブラキサーだけでなく、クレンチング、悪習癖もリスクとなる。リスク因子リスクの種類リスクの度合い1患者がブラキサーの場合*(非ブラキサーに比較して)チッピングのリスク7倍修理あるいは再製作が必要な破折のリスク5倍2インプラントどうしの上下対合関係(対合歯が天然歯と比較して)チッピングのリスク7倍修理あるいは再製作が必要な破折のリスク13倍3ナイトガードなどの未装着(ブラキシズムの有無で比較して)ブラキサー患者のチッピングのリスク7倍非ブラキサー患者のチッピングのリスク2倍1.ベニア陶材のチッピングが生じる原因3章上部構造のチッピング48

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