別冊 デジタルデンティストリーの進化と検証
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64はじめに これまでインプラント周囲組織の安定を目的とする臨床的手法として、プラットフォームスイッチングの有用性が示唆されてきた。しかし、そのメカニズムは未解明な部分も多く、臨床における詳細なプロトコルも確立されていないのが現状である。 本論文の目的は、顎骨形態、歯周組織、咀嚼システムがヒトと近似するカニクイザルにインプラントを埋入し、通法により作製された骨・血管鋳型標本を用いてインプラント周囲の骨と微細血管の構造を詳細に観察したものを供覧し、そのデータを分析するとともに、インプラントの埋入深度、アバットメント形態およびインプラント‐インプラント間距離などについて臨床的な考察を加えることである。「科学」と「魔術」 もちろん現代では、「科学」と「魔術」は対立概念としてとらえられているが、近代までは「科学」と「魔術」を分離しては考えられていなかった。その後、「錬金術」が「化学」に、「占星術」が「天文学」へと変化していったように、やがては「科学」というものの概念が整理されてきたのである。また、科学の研究成果をきちんと理解することが非常に難しいために、科学を「信奉」、「崇拝」するような態度が見られる、という指摘は昔からある。“一般的には、科学は一種の神秘的な、または魔術的な効果を持ったものとして受け止められがちである。もしもわれわれがその原理を理解しようとすることを断念して、科学の驚くべき成果と万能性のみを期待しようとするならば、その時、科学はわれわれにとって「魔術」同然なものになるだろう。物事の論理たるべき科学は、もしわれわれがそこプラットフォームスイッチングの科学―基礎的研究結果の提示から臨床的考察まで―●略歴1987年 大阪歯科大学卒業1990年 牧草歯科医院開業歯学博士日本歯周病学会専門医・指導医JIPI主宰OJ正会員・理事牧草一人(牧草歯科医院)OJ Award受賞

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