別冊 デジタルデンティストリーの進化と検証
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86はじめに 世界でも類をみない速さで高齢化が進む日本において健康長寿が今後の医療の重要な課題となっており、その鍵となる口腔の健康維持と改善が注目されている。著者の開院している千葉県柏市では高齢化に対応するまちづくりのための大規模健康調査(柏‐東大プロジェクトの一環)が行われている。これは生活習慣病の予防とともに注目されている虚弱化予防のために、その根底をなすサルコペニア(加齢性筋肉減弱)の徴候を簡単な指標で見出し、食力に着目した新概念「食の加齢症候群」の考えを基に「全身と口腔のエビデンス」を構築するために行われている。そして、高齢期におけるメタボ検診(カロリー制限)から上手く切り替えられることが期待されている。 このように長寿社会においては、より「食べる」ことが重要となっている現在、歯を失った患者にとって、インプラント治療は福音の治療と言えるであろう。それにともない、インプラント補綴にあたっては、長期視点で考えることがより肝要となり、補綴装着をゴールでなくスタートととらえ、将来起こり得るトラブルや患者のニーズの変化、要介護までを見据える必要性が出てきている。このような背景の中、産業界のハイテクノロジーが歯科に応用されCAD/CAMを始めとするデジタルデンティストリーが目覚ましい進化を遂げている1)。そこで、本稿では長寿社会を考慮し、デジタルデンティストリーがもたらすインプラント補綴について、特に無歯顎・多数歯欠損に焦点を当てて検討してみたい。光学印象の進化 デジタルデンティストリーの進歩として、まずCAD/CAMが挙げられるが、それとともにインプラント補綴デジタルデンティストリーがもたらすインプラント補綴―長寿社会を迎えて―●略歴1986年 日本大学松戸歯学部卒業1989年 千葉県柏市にて田中歯科医院開業2008年 日本大学松戸歯学部臨床教授一般社団法人日本インプラント臨床研究会(CISJ)会長公益社団法人日本口腔インプラント学会 専門医・指導医・代議員OJ理事田中譲治(田中歯科医院)

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