抜歯テクニックコンプリートガイド
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CHAPTER 3 下顎埋伏智歯52抜歯テクニックコンプリートガイド■ここでは切開線について,文献ではどのような議論・報告がされているのかを検討してみよう.議論1 歯周ポケット■垂直切開法(第二大臼歯歯肉溝から約5〜8 mm離れた部位での下顎枝からの約3 cmの口腔前庭切開,図13a)と,古典的L字弁法(第二大臼歯近心歯間乳頭部に縦切開をもった縦切開法,図13b)を比較した文献がある20.術後60日では前者の第二大臼歯の歯周ポケットが少なく,術後90日では差はないとし,検定上の優位差はないものの,垂直切開法が低侵襲であるとしている20(図13).■健常な第二大臼歯歯肉溝に切開を加えることには,エビデンスはないが,やはり長期的な不安が残るので,多くの論文で争点となってきた.議論2 術後疼痛・腫脹・開口障害■第二大臼歯遠心歯間乳頭部を含む縦切開法(狭義の三角弁法)と,第一大臼歯近心歯間乳頭部を含まない袋状切開法との比較では,術後疼痛に差はなく,術後7日までは縦切開法のほうが腫脹と開口障害が著しい21.議論3 術後疼痛と創哆開■第二大臼歯頬側中央に切開をもつ縦切開法(bayonet弁法)は,第一大臼歯近心に至る袋状切開法と比較して,術後の腫脹と開口障害では差がないが,術後疼痛は早く消失し,袋状切開法より創哆開が著しく少ない.縦切開法は,袋状切開法よりも術後疼痛と創哆開が少ない22.議論4 創哆開■抜歯後の創哆開は,術後治癒期間を長くさせ,長期間の疼痛の原因にもなる.第二大臼歯遠心歯間乳頭部を含まない縦切開法(狭義の三角弁法)と,第一大臼歯近心歯間乳頭部を含まない袋状切開法で一次閉鎖を比較すると,袋状切開法の創哆開は57%であり,縦切開法の約6倍の発生率である23.■口腔内切開には,No.11,No.12,No.15,No.15cなどを用いるが,No.11かNo.15が多く使用される.メスは粘膜に垂直に入れ,手前に引きながら切るのが原則である.しかし口腔内,とくに下顎第二大臼歯の後方が切開しにくく,No.11を逆手で使うことやNo.12の使用が薦められることもある24(図14).当然,No.12は手前に引かなければ切れないが,使い方によっては便利である.初心者で下顎第二大臼歯の遠心切開に自信のない者には強く勧めている.メスは何を使うのか?図13 垂直切開法(a)と古典的L字弁法(b).*参考文献20より引用・改変図14 No12メスの使用法→当然手前に引かなければ切れない.使い方によっては便利.*参考文献24・28頁より引用・改変ab

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