ノンメタルクラスプデンチャー
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PART 1 ノンメタルクラスプデンチャーのベーシック022された新しい材料がつぎつぎに販売されるため,客観的なデータが得られない現状があるが,比較的共通している点について解説する.ポリアミド系樹脂■ ポリアミド系樹脂は,ノンメタルクラスプデンチャー用の樹脂のなかではもっとも古い歴史があり,数多くの種類がある.バルプラストⓇはその代表であり,ナイロン系樹脂ともよばれている.■ 他の樹脂よりも柔らかく,破折しにくく,装着感がよい.■ しかし,着色しやすく,調整や修理がしにくいとされている2.■ 曲げ強さ・曲げ弾性率をみると,「柔らかい群」(バイオ・プラストⓇ,バルプラストⓇ,フレックススターVⓇ)と,「比較的硬い群」(ルシトーンFRSⓇ,バイオ:トーンⓇ,アンカーアミドⓇ,サーモセンスⓇ,アルティメットⓇ)に分かれる.臨床的には歯の豊隆の程度でどの材料を使うかの選択基準になっていることが多い.■ ポリアミド系樹脂は,常温重合レジンとは直接接着しない.したがって,修理あるいはリラインは,原則的に技工所に預けて再成形する必要があるが,シリカコーティング,4-META /MMA-TBBレジンによる表面処理5,6,あるいはメーカーが販売している専用の接着材によって,直接修理する方法も提案されている(→128ページ参照).■ その他,吸水性については,それぞれの材料で違いがあるが,PMMAレジンより格段にすぐれているわけではない.■ バルプラストⓇ,ルシトーンFRSⓇは,PMMAレジンより着色しやすい.■ 適合精度に関する報告は少ないが,バルプラストⓇの熱収縮は大きいため,多数歯欠損症例には不向きであろう.ポリエステル系樹脂■ ポリエステル系樹脂は,エステショットⓇとエステショット ブライトⓇの2種類がある.■ エステショットⓇは適合精度が非常によく7,常温重合レジンとの接着強さもPMMAレジン以上である3,4.しかし,シャルピー衝撃強さが弱く8,実験的にも臨床的にも破折例がみられるため,現在の主流はエステショット ブライトⓇになっている.■ エステショット ブライトⓇは,曲げ強さや曲げ弾性率がポリアミド系の「比較的硬い群」に近く,破折リスクは少ない3,4.常温重合レジンとの接着強さはエステショットⓇに劣るものの,レイニング樹脂Ⓡに近い3,4.■ 常温重合レジンとの接着が良好3,4であることは,ポリエステル系の大きな特徴の1つであり,修理や増歯,リラインがチェアサイドで可能であることから,ポリアミド系樹脂と選択を迷う際の判断材料になる.ポリカーボネート系樹脂■ ポリカーボネート系樹脂は,従来保険導入されていた熱可塑性樹脂をノンメタルクラスプデンチャー用に改良したものである.曲げ強さ・曲げ弾性率とも,ポリアミド系・ポリエステル系樹脂と比較して高い.■ ジェットカーボ-SⓇ,レイニング樹脂NⓇは,従来のジェット・カーボⓇ,レイニング樹脂Ⓡよりも弾性率を低くしてアンダーカットが大きい症例にも適用できるようにしたものである.破折のリスクは少なくなっている.■ ポリカーボネート系樹脂はすべて常温重合レジンとの接着は良好である.■ 適合精度はポリエステル系よりやや劣る7.■ ポリカーボネート樹脂は,加水分解によってビスフェノールA(BPA)が生成・放出されることが知られている9.添付文書には「ポリカーボネートから溶出するBPAのレベルが人の健康に重大な影響を与える」という科学的知見は得られていないが,「妊婦への使用は控える」こととされている.■ 剛性が高いため,樹脂の劣化は少ない.■ ISOの定める義歯床用材料としての剛性をもっている1,3ため,樹脂の強度を求める場合に使用される.アクリル系樹脂■ ノンメタルクラスプデンチャー用のアクリル系樹脂は,アクリ:トーンⓇのみである.保険適応のアクリル系熱可塑性樹脂であるアクリショットⓇやアクリジェットⓇと比較すると,曲げ強さや曲げ弾性率はかなり低い.■ 通常のアクリル樹脂と同様,常温重合レジンとの接着

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