コンポジットレジン修復のサイエンス&テクニック
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82Enamel BondingScience ofエナメル質接着のサイエンスそもそも接着とは 接着とは、モノとモノとが限りなく近接することで生じる現象である。しかし、肉眼では平滑に見える面であっても、その表面には微細な凹凸が形成されており、被着体同士の緊密度が一部で破綻している。そこで、この空隙を埋めるのが接着材であり、これによって被着体間が緊密に接した状態を形成することができる。 物質を構成する分子間には、いくつかの種類にわたる接着力が生じており、これによって拘束されている。分子間に作用している力には、クローン力(電気的引力)、水素結合力およびファンデルワールス力などがある。とくにクローン力やファンデルワールス力は、接近すればするほどに、その力は急激に増大する。一方、分子が極限近くに近接すると、逆に斥力が急激に増大し、反発力が生じる。この引力と斥力とが作用しあうところに分子間力の極大点を生じるが、これが理論的な接着現象である。 効果的に接着現象を生じさせるためには、いくつかの条件が必要である。すなわち、被着体をぬらすために接着材は液体であり、被着体に十分に広がるためにヌレ性が高いことが必要である。液体には、それ自体の表面積をできるだけ小さくしようとする表面張力が働いている。この表面張力が小さいほど固体表面に広がりやすい。逆に、固体の表面張力は、液体のそれよりも常に小さくなることが必要である。最終的に、接着材が硬化することによって、その接合部が実用に耐えうる強度を発揮することによって、接着系が形成される(図1-1)。サイエンスを臨床で活かすヒント 接着力の発現には、以下の5つの条件が必要である。① 被着面の前処理② ヌレ性の向上③ 機械的結合の形成④ 化学的結合の形成⑤ 接着材の浸透、硬化

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