コンポジットレジン修復のサイエンス&テクニック
5/6

122コンポジットレジン充填のテクニックTechnique ofComposite Fillingコンポジットレジン修復用窩洞形成の考えかた 歯質接着システムと併用して行われるコンポジットレジン修復では、その窩洞形態はう蝕病巣の範囲が決定する。臨床操作の手順としては、まずう窩の開拡が行われる。このとき、エナメル質は可及的に保存することを心がける。しかし、あまりに狭い開拡に留めると、エナメル-象牙境におけるう蝕病巣の広がりを見逃すことがあるので注意が必要である。う蝕検知液を使用して、ミラーを適宜用いてこの部を精査する。 感染歯質の除去では、ラウンドバーをマイクロモータに装着して染色部を除去する。再度検知液で染色を行い、手用切削器具であるスプーンエキスカベータを用いて感染歯質を慎重に除去する。また、これら手用切削器具の使用は、歯頸部窩洞で歯肉に近接した場合にも有効であり、不用意に歯肉を傷つけることを防止できる。 感染歯質へのアプローチ法としては、前歯部では唇舌側にこだわらず、器具到達の容易な方向から行う。かつては、審美的な要因を考慮して舌側のみからアプローチした時代があったが、審美的修復が可能となった今日では、その限りではない。また、臼歯部では、隣接面に生じたう蝕に対しては、可能であればスロット窩洞とする。しかし現実的には、咬合面からアプローチする頻度が多く、ミニボックス窩洞が選択されることになる(図4-1)。 辺縁隆線部を残すために、トンネル窩洞が選択される場合もあるが、臨床成績を通覧すると、術者の高い技量が要求されるとともに、う蝕病巣を残地させる確率が高いことが判明しているところから、一般的には推奨されない。 病巣の除去を終了し、窩洞外周の凹凸を整理する。その後、前歯部症例の場合では唇側には薄く長いべベルを付与する。これによって歯質と修復物とに移行性を得ることが可能となり、カメレオン効果が期待できる。臼歯部窩洞では、咬合面のエナメル小柱の走行を考慮して、べベルは付与しない。しかしⅡ級窩洞における咬合面から隣接面への移行部では、べベルを付与することで鋭縁部を除去する。これによって、脆性材料であるコンポジットレジンの破折防止に役立てることができる(図4-2)。

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer9以上が必要です