オーラル・インプラント・リハビリテーション・シリーズ Vol.2
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2.1 これからのインプラント治療に必要な全身疾患把握のための問診2.1.1超高齢社会における問診とコミュニケーションの重要性 超高齢社会における有病率の増加により、初診時における医療面接(問診)の重要性が高まっているのは周知の事実である。高血圧の罹患率を例に挙げると、65歳以上の高齢者では、65歳未満の5倍との報告がある。 さらに、本書6章で示すように即時荷重インプラント治療を行ったときの有病者率は、高血圧患者が18.4%、糖尿病患者が6.4%と有病者率が高いことを示している。 初診時の既往歴、現病歴などの全身状態の問診は特に重要であるが、インプラント治療を行う前に必ず内科的な検査結果データを書面にて入手しておくことが肝要である(図2.1.1)。 術中の危機回避のみならず術後メインテナンスにおいても問診による全身状態の把握の重要性が問われ、たとえば、糖尿病患者において医師の管理下に置かれていない場合は、残存歯をはじめインプラント周囲においても感染リスクが増大する可能性があることを考慮する必要がある(図2.1.2)。超高齢社会を迎えた現在、インプラント治療においての術前管理、全身状態の把握が、内科検診も含め必須と言える。また、日々のコミュニケーションを介して得る情報も大変重要である。2.1.2問診票の各項目のポイント①現在、歯科以外で通院されていますか? 現在通院中の病院・医院の情報を得る。対診時、緊急時の情報源になるため、診療科、および担当医、連絡先(電話番号)の入手は重要である。 健康診断のデータがあれば入手する。半年以内のデータであれば参照する。 毎年健診を受けている人は問題ないが、5年以上受けていない人は要注意。②今までにかかった病気はありますか? 患者から主たる全身疾患の情報を入手するために重要である。特に、インプラント治療にかかわりの深い疾患を聞き漏れのないよう列記する。③上記②の病気にかかったのは何年前ですか? 服薬期間の参考にもなるため、罹患してからの経過が重要である。④入院経験の有無および過去の手術歴はありますか? 1)麻酔、手術経験の有無、2)その時の状態、3)予後と経過、4)服用していた薬剤名、5)疾患再発の有無などについてチェックする。 入院時などに使用した薬剤でアレルギーなどはなかったか、麻酔薬で副作用はなかったか、鎮痛薬のピリン系や抗菌薬のペニシリン系では特に多いので必ず聞く。 感染症のスクリーニングの点から輸血の有無、がん治療における全身的抵抗力の低下(白血球数など)についての情報を入手する。特に、乳がんや肺がん、前立腺がんな今井恭一郎、天川智央、脇田雅文図2.1.1 問診の様子。2章 超高齢社会におけるインプラント治療のための内科学26Oral Implant Rehabilitation Series

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