オーラル・インプラント・リハビリテーション・シリーズ Vol.2
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3.2 ファイナルレストレーション装着後の口腔周囲筋ケアの種類3.2.1ファイナルレストレーション装着後のMFT ファイナルレストレーション装着後における口腔周囲筋ケアの意味は前述のとおり、咀嚼機能や嚥下運動を行うための、垂直顎間距離が適切であるかどうかを確認して、口腔周囲筋が正常な機能を保つようにすることである。 口腔周囲筋は「下顎」「舌」「表情」を動かす筋肉であり、それらが結実することによって適切な咀嚼や顔の自然な表情をもたらすことになる。それらを改善する訓練として有効とされているのが、MFT(Oral Myofunctional Therapy:口腔筋機能療法)である。 ファイナルレストレーション装着後筋力がかなり改善しているが、咬合のバランスがとれていない場合もある。引き続き口輪筋を鍛え、頬筋に力を入れることで、上咽頭収縮筋に活力を与え、嚥下機能を維持回復できるのである。口輪筋、頬筋、上咽頭収縮筋は一対と考える。この基本となる筋を鍛えることで、噛み、くだき、飲み込む作業が円滑になるのである。 3.2.2で解説する口腔周囲筋ケアは、ファイナルレストレーション装着後も行う必要がある。個々の、たとえば「舌を噛みやすい」「動作が鈍い」などの症状が出た場合は、それに適した口腔周囲筋ケアを選択し、指導する必要がある(図3.2.1)。3.2.2各種ファイナルレストレーション装着後の口腔周囲筋ケア3.2.2.1 首を上下に向ける(唾液の改善・食後の疲れ) 本口腔周囲筋ケアにおいては開口筋(顎二腹筋)、開口筋群(顎舌骨筋、オトガイ舌筋、外側翼突筋)を訓練することによって、下顎を下げ、舌骨を引き上げて、下顎骨を引っ込めることで唾液の流出と嚥下を行いやすくすることが目的である(図3.2.2)。 本口腔周囲筋ケアは頚部の筋に大きな負担がかかるため、患者には無理をさせずに行わねばならない。また、頭部を後ろに反らせながら、横に傾けると胸鎖乳突筋に負担がかかりやすので注意を要する。口腔周囲筋ケアの方法としては以下のとおりである。 ①口を大きく開く ②口を開いたまま頭をゆっくり後方へ倒す ③前歯の切端を合わせる気持ちで口を少し閉じ、20秒その状態を保ち、その後、ゆっくり頭を元に戻すこの動作を3回繰り返す。 この運動により、首を支える筋肉とともに、開口筋、閉口筋を訓練することができる。首全体の筋肉を鍛えるとともに、舌を意識することで首周囲の筋肉と舌、胸、喉の筋肉を同時に鍛えることができる。 体の中のほとんどの骨は隣り合う骨と直接接しているが、肩甲骨や舌骨は他の骨と直接接しているわけでない。舌骨は顎の下で宙に浮いている。胸からの筋肉、喉からの筋肉、そして顎や頭蓋骨や肩甲骨からの筋肉につながっていて、それらの筋肉の引っ張り合うバランスによって位置が決まってくる。 噛みしめや歯ぎしりの影響という面では、側頭骨から舌骨につながっている茎突舌骨筋と顎二腹筋の状態を考える必要がある。噛みしめや歯ぎしりの癖を持つ人の多くは咀嚼筋に力が入ってこわばっているだけでなく、耳の周辺から下顎、喉仏のところあたりまで力が入って硬くなり緊張状態にある。ここは、茎突舌骨筋と顎二腹筋の存在するところである。越前谷澄典、新井聖範、長尾龍典、五十嵐 一3章 ファイナルレストレーション装着後の口腔周囲筋ケアとは?50Oral Implant Rehabilitation Series

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