ITI Treatment Guide Volume8
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9章 臨床ケース報告ITI Treatment Guide n Volume 8116 男性患者は14歳のとき、自転車事故により₁と₂を失った。青年期に、喪失歯を可撤性補綴装置で修復した。21歳の時患者は、喪失した₁と₂のインプラント治療のため、かかりつけの歯科医師から大学病院を紹介された。患者は健康で非喫煙者であった。長年にわたる₁と₂の欠損は、とくに₁部において、歯槽堤の著しい萎縮をもたらしていた。初めに、吸収した骨を再建するために、ブロック骨移植により歯槽堤が増大された。Straumann SPインプラント(直径4.1mm、長さ12mm;Institut Straumann AG, Basel, Switzerland)とStraumannナローネック インプラント(長さ10mm)が、6ヵ月後に正しい位置と角度で、₁部と₂部にそれぞれ埋入された。3ヵ月の治癒期間とそれに続くリエントリーの後、患者は補綴装置を装着するため、紹介元の歯科医院に戻った。患者は、補綴装置装着後6ヵ月に再び診察を受けた。正面観において、高いスマイルライン、不規則な歯肉形態、そして₁と₂のインプラントクラウンは、天然歯と比べ青灰色を帯びた色合いを呈していた(図1)。 拡大下で、₁部のインプラントの頬側に瘻孔形成を伴う著明な発赤だけでなく、₁のインプラントクラウンにおいて切端が短いことが認められた(図2)。₁と₂のクラウンはセメント合着されていた。X線写真では、インプラントショルダーとクラウン辺縁との間の、とくに₁部のインプラントにおける明らかなギャップが認められた(図3a、b)。9.1.1  補綴コンポーネントを交換して対応した医原性合併症:非外科的対応9.1 生物学的合併症図1 ベースライン時の正面観。₁のインプラントクラウンから天然歯の₁にわたる不規則な歯肉形態を伴う高いスマイルライン。図2 瘻孔形成を伴う₁のインプラントクラウン頬側の炎症性軟組織。図3a、b ベースライン時の₁部および₂部のインプラント。(a)₁部のインプラントのセメント合着の失敗による、インプラントとクラウンの間の明らかなギャップ。(b)₂部のインプラントに、ほんのわずかなセメント合着の失敗が認められる。abB. Schmid/(訳)明石悠子、船越栄次

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