ITI Treatment Guide Volume8
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9.1.1 補綴コンポーネントを交換して対応した医原性合併症:非外科的対応Biological and Hardware Complications in Implant Dentistry117 クラウンはセメント合着されており、強く圧接したことで余剰セメントが軟組織内に残存し、それはインプラント周囲の炎症(粘膜炎)の原因となった。もし残留セメントが存在すれば、長期的にはセメントに関連した骨吸収(インプラント周囲炎)が高い確率で生じる。 図3c、dに、ナローネック インプラント周囲の残留セメントおよびインプラント周囲炎に起因する骨吸収を伴う、インプラント支持前歯部クラウンのセメント合着後6年の症例を示す。 歯肉縁下深くセメント合着された上部構造の残留セメントの除去は、困難となる場合がある(Korschら、2013)。ITIの合意声明は、インプラントショルダーが粘膜縁下深くに位置する症例(1.5mmより深い)では、スクリュー固定式上部構造、あるいはセメントを浅い位置に留めるためカスタムメゾストラクチャーを推奨している(Wismeijerら、2013)。残留セメントによる医原性インプラント周囲炎の治療アプローチは、基本的に2つある:・ クラウンを装着したまま、(好都合な)明視下で残留セメントを除去するための外科的介入。欠点は、外科的アクセスが困難であり、この症例のように不適切なクラウンが依然として装着されたままになるということである。・ 修復物を撤去して行う、残留セメントを除去するための非外科的介入。利点は、審美的に改善され、より適合の良いクラウンを新製する機会が得られることである。不利な点は、明視できない状態での残留セメントの除去が困難であり、新しいインプラントクラウンに伴い高いコストが生じることである。 審美的に不満足な結果から、患者は新しい修復物と非外科的介入を選ぶことを決意した。合着用セメント(この症例ではKetacTM Cem, 3M AG, Rüschlikon, Switzerland)が使われていたため、それぞれのクラウンを壊さずに除去することは困難である。インプラント体の損傷を避けるため、カーバイドバーを用いてクラウンを撤去することが決定された。局所麻酔下で、₁と₂のクラウンは頬側と口蓋側に切り込みを入れて開かれ、そして撤去された。クラウンの粘膜下マージン部軟組織へのいくつかの小さな損傷はほぼ避けられなかった(図4)。アバットメントは、スクリューが外され撤去された(図5)。インプラント周囲の炎症性組織と残留セメントを除去するために、ペリオドンタルキュレットと鋭匙が用いられた。そして、粘膜溝相当部はグルコン酸クロルへキシジン(0.1%)で洗浄された。図4 カーバイドバーを用いた₁のインプラントクラウンの撤去。頬側と口蓋側の切り込みの跡。図5 アバットメント除去後の咬合面観。インプラント周囲軟組織の明らかな炎症性徴候;炎症性軟組織と、セメント合着されていたクラウンが不適合であったことから、インプラントショルダーは見ることができない。驚いたことに、歯科医師はクラウンだけでなくアバットメントをもセメント合着していた(図6)。これはインプラントメーカーの使用説明書に反している。図3c、d (c)クラウンのセメント合着後6年のナローネック インプラントのX線写真。残留セメントがインプラントネックの近遠心側に認められる。(d)術中:炎症と骨欠損の原因となる残留セメントが明白に認められる。cd

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