薬剤・ビスフォスフォネート関連顎骨壊死
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11ビスフォスフォネートとは作用機序の異なる骨吸収抑制薬である抗RANKL抗体のデノスマブでもビスフォスフォネートと同様の顎骨壊死が生じ8,さらに血管新生阻害薬のベバシズマブに関連する顎骨壊死が生じると報告されるようになった.このことからAAOMSは,2014年のAAOMSポジションペーパーで,BRONJの呼称を「MRONJ」(medication-related osteone-crosis of the jaw:薬剤関連顎骨壊死)と変更した9.2014年のAAOMSポジションペーパーは,2006年のAAOMSポジションペーパーの診断基準と比較して,関連する薬剤が①ビスフォスフォネートに限らず,「骨吸収抑制薬か血管新生阻害薬」に拡大され,②骨露出だけでなく,「口腔内外の瘻孔から骨が触知」も対象となり,さらに当然だが,③「(がんなどの)病変の顎骨への転移がない」ことが明記されたこと,が変更点である(表1).MRONJは薬剤の副作用MRONJは,ビスフォスフォネートとデノスマブの薬剤添付文書で「重大な副作用」の1つとして記載されている(表2).そこでは「観察を十分に行い,異常が認められた場合には投与を中止するなど,適切な処置を行う」とあるので,副作用であるMRONJを生じる危険性のある場合や,生じた場合には,投与の中止も選択肢の1つであろう.2014年のAAOMSポジションペーパーでは,血管新生阻害薬によるMRONJも問題視されているが,わが国における報告例は,まだ少ないようである.血管新生阻害薬のベバシズマブの添付文書(2015年4月現在)に,MRONJについて「9.その他の注意」に「(4)本剤投与後に顎骨壊死が発現したとの報告があり,多くはビスフォスフォネート系製剤を投与中あるいは投与経験がある患者であった.また,本剤を含む血管新生阻害薬とビスフォスフォネート系製剤を併用時に顎骨壊死の発現が増加する可能性が示唆されたとの報告がある」と記載されている.わが国ではMRONJが増加!わが国では製薬会社だけでなく,「医療機関からの副作用等報告制度」も法制化されている(*次ページ参考を参照)が,MRONJ・BRONJを診断した医療機関がすべての症例を厚生労働省へ報告しているわけではなく,現時点ではMRONJ・BRONJ患者数を正確に把握することは容易ではない.2008年に日本口腔外科学会の調査企画委員会による全国調査(期間:2006年4月〜2008年6月.以下,全国調査)でBRONJの疑いがある568例が登録された.骨の露出や,ビスフォスフォネートの薬剤名・投与期間などが不明なものを除外した結果,263例がBRONJ患者とされた4.1-1のように,わが国のポジションペー表1 MRONJの診断基準(赤文字は追加・変更部分).以下の項目にすべて該当するとMRONJと診断される.①現在または過去に骨吸収抑制薬か血管新生阻害薬による治療歴がある.②顎顔面領域に骨露出を認める,または口腔内外の瘻孔から骨が触知され,その状態が8週間以上持続している.③顎骨への放射線照射歴がなく,明らかな顎骨への転移がない.MRONJは薬剤の副作用表2 薬剤添付文書の例(該当部分のみ引用).1.重大な副作用⋮⋮5)顎骨壊死・顎骨骨髄炎(頻度不明):顎骨壊死・顎骨骨髄炎が現れることがあるので,観察を十分に行い,異常が認められた場合には投与を中止するなど,適切な処置を行う.CHAPTER 1 MRONJ(薬剤関連顎骨壊死)の概要と,わが国の現状BRONJからMRONJに1-2

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