根管治療で失敗する本当の理由
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8PART 1 根管治療の基本CHAPTER 1なぜ病気・病変が生じ,そして治せるのか? 病気・病変は因果関係から成立する.病気の原因が存在して,それに生体が反応(炎症および免疫応答)した結果で病変は発症するのである.治療の根本にあるのは,「人の身体には自ら治る力がある」という考えと,1人ひとりの患者がもっている「治ろうとする力を引き出すこと」である.introduction歯髄炎や根尖性歯周炎などの歯内疾患の原因は,歯髄に侵入した細菌が主として根管(根管系 root canal sys-tem)内部に生じさせた病原性物質である.それゆえ,歯内疾患の治療方針は,根管治療によって根管内部の病原性物質を除去して,清潔に永く維持することであり,このことが完全に成し遂げられれば,生体の自然治癒能力がやがて高められて病気が治癒することになる.1-1大きな根尖部病変は治りにくい? 「エックス線写真上で大きな根尖部病変は治りにくい」と,経験も踏まえて単純に考える歯科医師も多い.しかしこのように,「通常の根管治療では,大きな病変を治癒させられない」と軽々しく判断してはいけない.根管治療の対象は,大きなエックス線透過像そのものでなく,病変を引き起こしている狭小な感染根管系なのである(症例1a~f).根尖部病変を通常の根管治療で治せるか否かの判断は,根管内の病原性物質を除去できるかどうかにかかっているのである.しかし,細菌などの病原性物質が根管内に限局するのではなく,根管外(extraradicular endodontic infection)や根尖部病変内に侵入・棲息しているという研究報告もある(図1a~d).これらの報告は,たとえ根管内(原発巣)を無菌化しても根尖部病変内(反応巣)の感染が持続するということになり,治療対象が根管系のみという従来の治療方針は,大きな影響を与えられることになる.指針図1a~d 上顎口蓋根管の根尖孔に,糸状菌の菌塊を思わせるものを認める.根尖孔abdc

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