根管治療で失敗する本当の理由
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17CHAPTER 2 病変の原因を見誤らない──病気(病変)にどう立ち向かうか? CHAPTER 2病変の原因を見誤らない──病気(病変)にどう立ち向かうか?正確な診断ができて初めて,適切な治療が行える.その場合の「正確な診断」は,確実に診査・検査した資料と,その資料の正しい考察によってのみ可能となる.診断から治療へのプロセスには術者の考察能力が密接に連鎖しており,その連鎖の乱れは誤診や治療ミスの原因となりかねない.introduction歯内療法関連の病気でよく耳にするのは,歯髄炎と根尖性歯周炎であろう.この2つは基本的には,病気が歯槽骨まで波及しているかそうでないかの違いで,発症のしくみは同じである.どちらも細菌侵襲によって炎症が引き起こされ,その結果として生体防御反応(免疫機構)が発揮され(図1),最終的に歯髄組織や根尖部歯周組織の破壊が生じることになる.歯髄炎の治療は,根管内に起こった炎症を根尖周囲組織に波及させないために行う.その一方,根尖性歯周炎の治療は,根尖部歯周組織に起こってしまった病変に対し,その原因である根管内の感染源の除去を行うことである.こうして病気に罹患した歯を保存するための方策が検討されることになるわけである.これは新たなる苦難の第一歩となり,多くの臨床家が日々の根管治療に悪戦苦闘しているのが現状であろう.2-1診査・診断を見誤らない 歯内療法における診断や治療行為は,入手可能な種々の患歯情報をもとに行われた判断・意思決定に基づいて実施される.しかし,現実の臨床では歯の内部の病態を正確に判定することは非常に難しく,ましてやチェアサイドで短時間かつ簡単に診査する方法は残念ながら存在しない.すなわち,病気の原因となる歯髄組織の感染の程度を正確に把握することなく,すべて感染根管というおおざっぱな臨床診断名を下し,抜髄治療や感指針肉芽組織細菌線維性結合組織歯根膜マラッセの上皮残遺象牙細管囊胞壁図1 根尖性歯周炎(根尖部病変)と免疫の戦い.

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