根管治療で失敗する本当の理由
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46PART 2 エンドのトラブルCHAPTER 5治療しても痛みがとれない! 歯痛と歯科治療は切っても切れない関係であろう.歯に感じる痛みの訴え方は,患者それぞれによって違ってくる.痛みの原因と考えられる病気が,歯科医師の診査では治っていると判断されたにもかかわらず,痛みをまだ訴えるケースも少なくない.患者の訴えに耳を傾け,症状の背景を探り,隠れた原因を追究することになる.introduction患者が歯科医院を訪れる理由の多くは,歯髄炎や根尖性歯周炎に由来する痛みや不快症状を取り除いてほしいからである.しかし,痛みの原因と考えられる歯(根管系)を治療しても,一向に痛みや不快症状が消失しない症例に遭遇することも少なくない.治療を開始して「痛みがすぐとれた」ということは,患者が歯科医師の技術的評価を判断する際に好材料となる.患者が訴える痛みを即座にとり除くことは,患者との信頼関係を獲得するための正攻法である.しかしながら,最近のストレス社会を反映してか,簡単に治るはずの歯の痛みがなかなか消えない症例も見受けられる.歯が原因だという明確な根拠がまだつかめないが,歯が痛いのだから「どこかの歯が原因であるはずだ」と考えるか,「歯以外の原因がある」と考えるか迷うことになる.こうした場合に,歯に原因がない歯痛,すなわち非歯原性歯痛が存在することを認識し,日常臨床で患者に対応することも必要である(図1).5-1抜髄後の痛みは心配ない? 通常の抜髄は,化膿性炎に陥った歯髄を除去することを目的に行われる治療法で,感染歯髄を含めて健康な根尖部歯髄まで切断除去される.その結果,外傷による炎症性変化をともなうことになり,多くのケースで抜髄後3,4日程度は「患歯の違和感あるいは軽度の打診痛」を訴えることになる.決して治療後の痛みは病的反応ではない.抜髄後の不快症状には,歯が浮いて噛むと痛いと訴える「歯根膜炎様症状」と,温度刺激に対して知覚の亢進を訴える「歯髄炎様症状」などがある.抜髄後に打診痛が持続する主な原因は,①歯髄組織の一部を根尖孔外に押し出している②根尖周囲組織の一部を歯髄組織とともに除去しているなどが考えられる.こうした症例に対応するには,根管洗浄した後に緊密仮封して,痛みの軽減するのを待つことが得策となる.指針図1 痛みの種類.痛み①侵害性受容性疼痛②神経障害性疼痛③心因性疼痛外傷などによる持続性疼痛抜歯後の下顎管損傷三叉神経痛ストレス疼痛性傷害特発性疼痛(原因不明)歯髄炎根尖性歯周炎口内炎

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