一般臨床家、口腔外科医のための口腔外科ハンドマニュアル’16
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ChapterPARADIGM SHIFT OF DENTAL SURGERY FOR 10YEARS LATER11-巻頭アトラス 10年先を見据えて 口腔外科医療のパラダイムシフト特集1:歯科・口腔外科における再建治療の可能性インプラント治療に用いられる骨造成法の現状ATLAS[1]骨造成法の新しい目的 インプラント治療の長期維持・安定性は広く認識され,摂食・咀嚼機能の回復の重要な手段の1つとして高く評価されている.しかし,歯を喪失すると,歯を支持していた歯槽骨は急速に吸収され,インプラント治療に必要な顎堤の高径や幅径が不足する症例に遭遇することも多い.そこで機能的,審美的にすぐれたインプラント治療を行うために,現在ではトップダウントリートメントの概念のもと,多くの骨造成法が行われたのちにインプラント埋入手術が施されている.従来,さまざまな骨造成法の成功の証として,長期的にその骨量を維持できるものと信じられてきた.しかし近年,骨造成法を行ったのち,新しく作り上げた骨の運命について疑問を投げかける結果が報告されている.「2007年版 東京歯科大学学会インプラントコンセンサス1」では,インプラント治療に用いられる骨造成法の目的を以下のように示し,現在ではこれが広く支持されている. 「骨造成術の目的は,インプラント埋入手術時に既存骨だけではリスクの高い症例に対して,そのリスクを軽減するためだけのものであり,長期的に骨量を維持することを目的としたものではない.したがって審美性の改善を目的とした骨造成術の長期的な予後には疑問が残る.さらに,インプラント埋入前手術として行われた骨造成術において,造られた骨は経時的に減少する.この骨吸収は,移植時から始まり,同部にインプラント治療を施した後の機能下においても継続する」と報告している.つまり,造成した骨がそのままの状態で長期間維持されることはないという臨床実感から,骨造成術の目的を現実的な形に変えたわけである.言い換えれば,埋入時にだけ骨造成術が役立ってくれればよいという考え方である.[2]骨造成法が成功するための条件(図1) 骨造成法が成功するためには,移植材料(自家骨,代用骨等)の周囲で新生骨が早期に,確実に形成されなければならない.つまり骨形成の促進がもっとも重要な課題となる.骨形成の促進には,成熟した骨造成法による硬組織の再建矢島安朝東京歯科大学口腔インプラント学講座連絡先:〒101‐0061 東京都千代田区三崎町2‐9‐18Yasutomo YajimaDepartment of Oral and Maxillofacial Impalntology, Tokyo Dental Collegeaddress : 2-9-18, Misaki-cho, Chiyoda-ku, Tokyo 101-0061Bone Augmentation for Implant Treatment②歯科インプラント治療における再建29

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