一般臨床家、口腔外科医のための口腔外科ハンドマニュアル’16
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ChapterPARADIGM SHIFT OF DENTAL SURGERY FOR 10YEARS LATER11特集1:歯科・口腔外科における再建治療の可能性-質骨を採取し,これを砕いて骨陥凹部等に使用することが多い.皮質骨細片移植は,緻密骨を細片状に砕いて表面積を増やし,血管が侵入しやすい有利な形態を付与しただけで,移植骨中に骨形成細胞はほとんどみられないため,母床よりの細胞供給に頼るのみである. 基礎実験においても,古くからブロック骨移植とPCBM移植の差は明らかにされている.長内3は,ウサギ下顎骨欠損部へ3H-thymidineでラベリングしたPCBMと腸骨ブロックをそれぞれ移植し,その細胞動態について観察した.その結果,PCBM移植では,移植された骨髄細胞が生き残り,ラベリングされた細胞が分裂増殖して骨芽細胞に分化し早期に新生骨を形成していたのに対し,ブロック骨移植では,移植骨中の細胞のほとんどが死滅し,ラベリングされた細胞は経時的に減少し消失したと報告している.さらに黒田4は,PCBM移植とブロック骨移植のリモデリング過程を観察した.最終的にブロック骨,PCBMとも移植時の既存の骨梁は完全に吸収され,新生骨に置換されて母床骨と同一の構造を呈するようになるが,ブロック骨では一連の経過が長期間を要したと報告している.したがって,移植された骨は,どのような形態や質であっても最終的には必ず吸収する.移植直後,PCBMのように骨形成細胞が生き残り,血管網の再形成が早ければ早期に移植骨は生着するが,逆に骨のリモデリングのスピードも速く吸収も早期に起こる.生着は遅いが形態付与や力学的支持にすぐれている皮質骨中心のブロック骨移植では,血管網の再形成が遅いため,骨のリモデリングにも時間がかかり,長期間経過しても血行の悪い壊死骨と化した移植骨は生体内にとどまり,感染の危険が増す.しかし,長期間移図7a~d 皮質骨細片移植(bone chip)による上顎洞底挙上術.移植骨側に生き延びた骨形成細胞はないが,再血管化に適した形状,スペースの確保が目的である.a:下顎枝外側の皮質骨を採取.b:採取した骨を細片状に加工.c:上顎洞粘膜を挙上し移植床を作製.d:皮質骨細片を補填.acbd34

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