一般臨床家、口腔外科医のための口腔外科ハンドマニュアル’16
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ChapterCURRENT PRINCIPLES OF DENTAL SURGERY2口腔外科手術の基本を知る 一般にピエゾサージェリーとよばれている超音波を用いた骨切削機器は一般歯科医療においても広く普及してきており,抜歯や骨隆起除去などの口腔外科手術,歯冠延長術などの歯周外科手術,歯槽堤拡大術やインプラント体の埋入などのインプラント外科手術などに応用されている.その一方で,われわれの専門である口腔顎顔面外科への応用も広がってきている.ここでは,主に口腔顎顔面領域への超音波骨切削機器の最近の応用について述べる.顎骨の切離と医療用超音波骨切削機器の開発PRINCIPLE 口腔外科では顎骨の切除や切断をともなう手術が多く,従来,マイセルやマレットを用いた分割,ギグリーソーなどを用いた徒手による分割から始まり,電動モーターによるドリルやバーなどを用いる回転切削機器を経て,それを往復運動に変換して切離を行うボーンソー,圧搾空気を利用したエアートームなどが用いられてきた.これらの機器は刃部を上下,前後,左右に作動させる,あるいは回転運動により,硬組織の切削を行うため切削効率はよいが,時として周囲軟組織を巻き込んだ損傷をともない,重大な出血や神経障害が生じることがあった. これら周囲軟組織の損傷の解決の策として,微振動により硬組織を切削破壊する超音波切削機器の開発はかなり以前より研究されていた.そもそも超音波振動子の開発は1950年代に始まり,産業,医療分野などにも応用されていったが,超音波振動装置の基本技術は石英(またはピエゾセラミックディスク)を交流電場におくと,結晶の進展と収縮を交互に生じ,微小振動が発生するという原理を応用したものである. 医療分野では,1960年代に磁歪素子による超音波機器を含めた機器を使用した骨切削の実験的研究が散見される.しかし,これらの研究の結果は,従来の機器より治癒期間が長く,外科的効率が悪いという結果であったため,骨切削の手術に十分なものではなかった.一方,わが国でも1980年代後半から同機器の研究開発が進められ,1988年には顎骨への応用が報告されているが1,機器の発熱やハンドピースの大きさなどから一般に普及するまでには至らなかった.その後の機器の開発・進歩髙野正行東京歯科大学口腔顎顔面外科学講座連絡先:〒101‐0061 東京都千代田区三崎町2‐9‐18Masayuki TakanoDepartment of Oral and Maxillofacial Surgery, Tokyo Dental Collegeaddress:2-9-18, Misaki-cho, Chiyoda-ku, Tokyo 101-0061Application of Ultrasonic Bone Cutting Devices to Oral and Maxillofacial Surgery口腔顎顔面外科手術への超音波骨切削機器の応用ピエゾサージェリーによる顎骨切離と削去122

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