一般臨床家、口腔外科医のための口腔外科ハンドマニュアル’16
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ChapterCURRENT PRINCIPLES OF DENTAL SURGERY口腔外科手術の基本を知る2トガイ骨,上顎結節など口腔内からの移植骨採取が多く行われるが,一部の機器では遊離腸骨採取,肩甲骨や腓骨の血管柄付き骨移植にも応用することができる(図6).[4]インプラント関連手術 インプラント体の埋入手術のみでなく歯槽骨拡大術,顎骨萎縮に対する顎堤形成術,自家骨移植術,サイナスリフトなどに応用されている. とくにサイナスリフト(サイナスフロアエレベーション)に超音波骨切削機器を用いることはとても有用である.頬側アプローチによるサイナスリフトでは上顎洞粘膜(シュナイダー膜)を破損しないように注意深く剥離挙上する必要がある.上顎洞側壁の骨は薄く(一般に0.5〜1.5mm程度),従来は,ラテラルウインドウの形成時に回転切削機器のラウンドバーなどを用いて行うため,時に上顎洞粘膜を穿孔して,上顎洞内への移植骨の漏出や上顎洞炎などの併発症が生じることがあった.その多くは,回転運動による粘膜の巻き込みやハンドピースの振動によるバー先端のブレなどによると思われる.バーを用いた場合の平均穿孔率は30%との報告もある10. 超音波骨切削機器では,微振動のため切削開始時のブレが少なく,精密な切削が可能であり,チップ先端による粘膜や血管の損傷はほとんどみられない.上顎洞粘膜の色が透けて見えるまで骨を削除して,ラテラルウインドウ形成後に,手用剥離子を用いて上顎洞粘膜の剥離をていねいに行うことにより,必要に応じた骨移植スペースが容易に確保できる(図7a,b).洞底部に癒着した粘膜を剥離挙上するための特殊なチップを用いることもある. 一方,歯槽頂アプローチによるサイナスリフト(ソケットリフト)は,手術中に上顎洞粘膜の穿孔を確認しにくいため注意を要するが,オステオトームを用図7a,b 側方アプローチによるサイナスリフト.ラウンドバーなどに比べて,シュナイダー膜の損傷の危険が小さく,剥離は容易となる.ab図6 腸骨からの自家骨採取.粘膜,骨膜などの巻き込みがなく損傷の危険が少ない.126

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