顔面成長発育の基礎
2/6

67第4章 下顎骨の成長発育境界となっている。現代の頭蓋顔面専門医は、成長発育時にみられるこの重要部位の構造変化を理解しておく必要がある。舌側結節は後方に面した部位で起きる骨添加によって後方に成長発育する。それはちょうど、上顎結節に骨が添加されるのと同様に成長発育する。理想的には、上顎結節は舌側結節に近接してその上部に位置する(すなわち、両部位ともPM[垂直基準線]上に位置する)。また、舌側結節と上顎結節の成長発育の比率やそれぞれの骨改造の程度は、理想的には同じである。その変異については、第10章で説明する。舌側結節は舌側(内側)方向に顕著に突出し、下顎枝から正中側に向かって位置することに注目してほしい。結節の突出は、結節の真下にある広範な骨吸収領域によって顕著となる。この骨吸収領域によって、舌側窩と呼ばれる大きなくぼみが形成される。舌側窩における骨外膜性骨吸収と舌側結節の内側面で起きる骨添加によって、両部位の形状がきわめて顕著になる(図4-3、図4-4A)。図4-2舌側結節が骨改造(変位)する方向はほぼ完全に後方であり、側方へのシフトはほとんどない。側方にほとんどシフトしない理由は、頭蓋底の側方成長は生後2~3年までで、小児期初期を過ぎても下顎の長さが伸びるようには下顎頭間幅径は増大しないからである。そうはいいながらも、ヒトの頭蓋底の幅(下顎頭間幅径もまた)はかなり広いため、より狭い顎弓に適応するための鍵となる骨改造移動が必要なのである(次で説明する)。

元のページ 

page 2

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です