顔面成長発育の基礎
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95 第5章 鼻上顎複合体図5-5(Moyers, R. E., D. Enlow:『第4版歯科矯正学ハンドブック[Handbook of Orthodontics]』から引用.Chicago, Mosby-Yearbook. Inc., 1988[許可取得済])上顎骨の転位を起こす生力学的な力上顎骨の転位を説明する説明の1つで、今でも有名な「鼻中隔」理論を紹介する(図5-6)。この理論はScottにより大々的に提唱されたものであり、結論を導く前提としては非常に合理的な理論であった。この理論は、前述の「縫合支持論」の批判から展開された。その後、まもなく世界中の多くの研究者によって支持され、縫合支持論に代わって、数年にわたってほぼ標準的な理論とされてきた。前述のとおり、軟骨は圧を受ける領域の成長発育を可能にする特異的な構造をもった組織であるため、圧の加わる場の成長発育に特異的な適応性を示す(第14章参照)。軟骨は長管骨の骨端軟骨板、頭蓋底の軟骨結合と下顎頭に存在し、それぞれの場で、軟骨内増殖により直線的成長をもたらす。ところが鼻中隔軟骨自体が寄与しているのは、軟骨内成長発育のごくわずかな部分のみであり、「鼻中隔」理論の基礎となるのは、鼻中隔にある圧に適応性の軟骨の成長発育が、上顎骨全体を前下方に転位(押し出す)させ物理的な力の発生源となっているということである。すべての上顎の縫合部の張力の加わっている場にみられる転位によって生じた張力に対応して、縫合部では二次的(実際は同時)に骨が増大する(236ページ参照)。ABCD

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