オーラル・インプラント・リハビリテーション・シリーズ Vol.3
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1.1 柏市における大規模健康調査(縦断追跡コホート研究)から見たオーラル・フレイルの現状1.1.1超高齢社会とフレイルの関係 現在、健康寿命の延伸という言葉が市民権を得ている。*柏スタディを含むさまざまな研究から、健康寿命の延伸には、咀嚼および嚥下を司る口腔機能の低下を防止することが欠かせないことが明らかになってきた1)。 特に高齢期における臼歯部欠損による咬合力の低下、あるいは筋肉量減少に起因する咬合圧の低下により、咀嚼可能な食品が少なくなる。具体的には緑黄色野菜など、あるいは高タンパク・高栄養のものが食べられないので、低アルブミン血症に陥る。噛めないとどうしても糖質偏重食になり、高GI食品(糖質の多い食品:ブドウ糖を摂脇田雅文、川口和子、鈴木仙一 柏スタディは、東京大学 高齢社会総合研究機構(IOG)が、柏市で3年にわたって行った大規模高齢者虚弱予防研究の「栄養とからだの健康増進調査」である。 調査は柏市の協力の下、2012年に要介護認定を受けていない満65歳以上の高齢者を対象に無作為化摘出した合計12,000名に対して案内状の郵送、この調査の意思表示のある2,044名が受診し調査を行った。最後の2014年の調査では、初回の調査された中で健康状態が悪化したなど、さまざまな事情により来られなかった方を除く1,308人(内訳は前期高齢者708名、後期高齢者600名)が受診した。調査団が柏市内の14か所の保健センターや近隣センターを巡回しながら行われ、加齢による心身機能の低下、特に筋肉量(骨格筋量)の減少、いわゆるサルコペニアの原因の解明を目的とした調査が行われた。 高齢期の方々(自立~要支援)の全身の栄養状態と食事摂取状況、体の筋肉量や筋力、歩行速度なども含めたさまざまな身体能力に加えて、噛む力や飲み込み、舌の力の強さといった口の機能、そして社会性や精神心理など、普段の健康診断では手が届かない多岐にわたる調査項目を設定し、将来、食べる力や飲み込む力、そして体の筋力が落ちやすいのはどのようなケースかを調べた。  高齢者における「食」というものを改めて原点から考え直そうと始まったこの調査は、最終的には、より健康的で、かつ介護になりにくい要素の解明(エビデンス)と、社会性が盛り込まれた包括的な改善プログラムの開発を目指した。コラム:柏スタディとは12Oral Implant Rehabilitation Series1章 オーラル・フレイルの予防とインプラント治療の関係

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