オーラル・インプラント・リハビリテーション・シリーズ Vol.3
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1.2 NCDsとオーラル・フレイルおよびサルコペニアの関係1.2.1オーラル・フレイルの前段階にあるNCDs フレイルの前段階として、生活習慣病が挙げられる。40歳から70歳台半ばまでは、生活習慣による違いから、高血圧、糖尿病、動脈硬化、高脂血症、肺疾患などの生活習慣病が起こる。その上流に共通の基盤をもって集積するのが、非感染性疾患:NCDs(Non Communicable Diseases)である。オーラル・フレイルの前段階にあるものがNCDsである。 口腔状態は、前段階のNCDsでもかかわっている。歯周病のコントロールにより、歯原性菌血症の防止あるいは咀嚼機能の維持・回復によりタンパク質低栄養防止、体組成の改善である。1.2.2オーラル・フレイルの後段階にあるサルコペニア1.2.2.1 サルコペニアとは サルコペニア(sarcopenia)とは、進行性および全身性の骨格筋量および骨格筋力の低下を特徴とする症候群である。それにより身体的能力が低下し、自立度が低下する。 骨格筋は、一般的に腕や足などの筋肉をとらえる傾向にあるが、口腔周囲筋においてもその低下が生じる。歯を失うことで筋長は短くなり、歯の存在により停止線として筋肉を収縮、咀嚼力としていたのが、筋肉の短縮により十分な咀嚼力が発揮できず、歯、歯槽骨の喪失により舌は萎縮し、前下方へ移動、舌はニュートラルゾーンに位置できず舌は乾き、口輪筋、頬筋の動作の緩慢は、食塊を咽頭に送り出すのが困難となり口腔周囲筋は疲労し、老人性顔貌へとなっていく(図1.2.1)1)。この口腔周囲筋を含む口腔機能の低下が高齢者の死亡3位の誤嚥性肺炎につながってきている。脇田雅文、川口和子、鈴木仙一図1.2.1 サルコペニアは、1989年にRosenbergによって「加齢による筋肉量減少」を意味する用語として提唱された。サルコペニアは造語で、ギリシア語でサルコ(sarco)は「肉・筋肉」、ペニア(penia)は「減少・消失」の意。当初は骨格筋肉量の減少を定義としていたが、徐々に筋力低下、機能低下も含まれるようになった。高齢社会総合研究機構. 2015年3月13日 世界会議2015-健康寿命延伸のための歯科医療・口腔保健虚弱・サルコペニア予防における医科歯科連携の重要性.高齢者の食力を維持・向上するために.より引用・改変1)。Sarco=Muscle(筋肉)SarcopeniaサルコペニアPenia=lack of(減少)<診断基準>1.低筋肉量(low muscle mass)2.低筋力(low muscle strength)3.低身体能力(low physical perfomance)16Oral Implant Rehabilitation Series1章 オーラル・フレイルの予防とインプラント治療の関係

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