オーラル・インプラント・リハビリテーション・シリーズ Vol.3
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り口であることを患者に認識させ、適切な義歯、あるいはインプラント治療により早期に虚弱に至る状態を回復させる必要がある。 患者が噛めない食品が増えることは、軟らかい食品が多い糖質の摂取割合が多くなることであり、良質の高タンパク質、線維性の野菜の摂取が少なくなる傾向が強くなるため高カロリーだが低栄養になり、その結果、栄養のバランスが悪く栄養不足となり、筋肉の量が減少し、全体の食事量が確保され体重が増加しているのもかかわらず、「第4段階の重度のフレイル期」に進んでいくことを患者に認識させ、歯科医師が説明しなければならない。今後、高齢者の食の安定性を「食力(しょくりき)」として位置づけることが必要であると「柏スタディ」では述べられている。 「第2段階オーラル・フレイル」において「しっかり噛んで、しっかり食べ、しっかり動く」という目標に向かって歯科治療が必要であることを説明し、合わせて退化している咀嚼筋、舌の動作の回復のため筋機能訓練が必要であるという考えを、歯科医師・患者ともに共有する必要がある。 「咀嚼」は、口に取り込んだ食物を嚥下可能な物性に変化させる「食塊形成」機能がある。食塊を形成するためには唾液分泌とともに、口腔機能がしっかりと備わっていなければならない。 「食塊」形成に必要なのは唾液と舌を含めた口腔周囲筋の調和なのである。 特に垂直顎間距離の回復は咬筋、側頭筋の左右の力のバランスを一定にすることが必要で、咬筋の収縮により、耳下腺管から唾液が口腔内に出て、「食塊形成」機能に役に立っており、垂直顎間距離を歯およびインプラント、図1.3.3 栄養(食/歯科口腔)からみた虚弱型フロー。「第1段階Pre-frailty期 」「第2段階オーラル・フレイル期」「第3段階サルコ・ロコモ期」「第4段階Disability」(身体的機能障害)の関係。飯島勝矢.依頼論文 日本補綴歯科学会第123回学術大会/臨床リレーセッション2.「サルコペニアの予防と改善に寄与する補綴歯科を目指して.多職種連携による高齢者の口腔機能,栄養,動機能の改善─補綴誌 2015, 7:92-101.より引用・改変4)。口腔機能心身機能代謝量低下低栄養サルコ・ロコモ食べる量低下舌運動の力低下咬合力低下サルコ・ロコモ期食品多様性低下食欲低下噛めない食品増加食べこぼし・わずかのむせ滑舌低下オーラル・フレイル期生活の広がり活動量低下精神(意欲低下)心理(うつ)活動量低下精神(意欲低下)心理(うつ)お口の健康の無関心口腔リテラシー低下むし歯と歯周病口腔リテラシー低下むし歯と歯周病歯の喪失前フレイル期フレイル期咀嚼機能不全摂食嚥下障害運動・栄養障害要介護フレイル虚弱高齢者口腔の虚弱QOL(口腔・全身)・生活機能疾患(多病)・多剤要介護を防ぐ:歯科の戦略28Oral Implant Rehabilitation Series1章 オーラル・フレイルの予防とインプラント治療の関係

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