ITI Treatment Guide vol.9
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7章 インプラントと部分義歯のデザインITI Treatment Guide n Volume 9110 湾曲した欠損部がある場合でも、インプラントは支持を増やすことに役立つ場合があり、フルクラムライン*からもっとも離れた位置に埋入されることが望ましい(図11)。長い中間欠損の部分義歯でも、特に Kennedy分類Ⅴ級で一方の支台歯形態がレストシートの設定に適していない場合、支持インプラントの利点を生かすことができる(図12)。しかし、このような状況では固定性補綴装置も適切であるともいえる。 より好ましいKennedy分類に改変できない、もしくは固定性補綴装置を選択できない場合にも、支台としてのインプラントは義歯の支持と動きを改善できる可能性がある。力のアームを短くし梃子のアームを長くすることで、RDPにフルクラムラインが残るものの、支持領域を広げることができる(図13a)。数本のインプラントを用いることで、フルクラムラインをなくすことも可能である(図13b)。これは義歯の安定を改善し、この症例では外観に触れるクラスプを側切歯に設定する必要性を取り除くことができる。理想的には、新たに発生する力のアームが梃子のアームよりも短くなるか同等になるような位置に、そのようなインプラント支台を設定すべきである。最遠心の支台歯(ここでは側切歯)に設置されたレストシートは、間接維持装置**として機能することになる。 インプラントを理想的な位置に埋入するために骨増生や上顎洞底挙上術といった大規模な外科的介入が必要となる解剖学的条件下では、この原則から外れることを許容しなければならない場合もある。このような処置の侵襲は、RDPにもたらされる力学的恩恵を大きく上回る。下顎では、例えば最遠心の支台歯よりも少なくとも小臼歯1歯分は離して遠心に埋入することで支持領域を拡大し、梃子のアームを長くして間接維持を得ることが望ましいと考えられている。しかしながら、オトガイ孔よりも近心側にインプラントを埋入しなければならない下顎においては、このコンセプトは現実的でないことが多い。そのため、支持を担う多角形と梃子アームは小さいままになる(図14と15a~c)。天然歯の下顎前歯部を含むRDPにおいては、インプラントを埋入した場合RDPのフルクラムラインが少し遠心になる。この場合の主な利点は、外観に触れるクラスプを避けられることである。フルクラムラインabc図11a~c 湾曲した中間欠損はインプラントで支持することができ、フルクラムラインをなくすことができる。図12 例えば切歯のように形態が直接レストシートに適していない支台歯が一端にある場合、長い中間欠損にインプラントを用いることで支持を増加させることもできる。*訳者注:fulcrum line(支台歯間線)は、支台にインプラントが含まれる状況を考慮し「フルクラムライン」にて統一した。**訳者注:本章での直接/間接維持(direct/indirect retention)は、Academy of Prosthodonticsによる「Glossary of Prosthodontic Terms」第8版の定義に沿うものである。

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