ITI Treatment Guide vol.9
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下顎インプラントオーバーデンチャーにおけるインプラントの数と位置Implant Therapy in the Geriatric Patient117 4本のインプラントによる下顎のオーバーデンチャーでは、インプラントはオトガイ孔間に埋入しなければならない。これは支持領域を制限するが、利用できる骨量が多く、かつ容易に下顎神経を回避できることが、このコンセプトの大きな利点である。さらに、下顎骨はたわみやすい骨で、特に短顔型において咀嚼力が加わった場合や大きく開口時に変形する(Lawら、2012;Prasadら、2013)。 ワンピースのフルアーチ補綴装置を用いていた時代に、患者が長いスパンを連結した補綴装置によって締め付けられる感覚をたまに訴えることを経験した。今日の修復治療においては、固定性補綴装置をセグメントに分けるコンセプトが広く受け入れられている。 下顎骨のたわみが臨床的に与える影響に関してはさらなる研究が必要ではあるが、遠心カンチレバーによって大きな支持域を確保できることを考慮すると、オーバーデンチャーのためインプラントを両側のオトガイ孔間に埋入することは合理的なアプローチであると言える。このコンセプトでは、4本のインプラントの理想的な分散は5-3-3-5の位置になる。しかしながら、顎堤弓の形態と利用できる骨の量、オトガイ孔の位置によっては、その配置を4-2-2-4にする必要もある(図1a、b)。基本原則:オトガイ孔間のインプラント4本の配置は、オトガイ孔の近心で最遠心の位置、前方はできるだけ正中から離した位置をとるべきである。 このような配置により理想的な支持領域を得ることができ、下顎神経を避けられ、機能的観点から自然な義歯形態が重要な部位において上部構造がかさばった形態になることを回避できる。インプラント周囲の骨吸収を助長することになる可能性があるため、インプラントどうしを近接して埋入しないように注意しなければならない(図1c)。図1a 下顎の4本のインプラントによるオーバーデンチャーでは、遠心のインプラントはオトガイ孔の近心で可能なかぎり遠心に、近心のインプラントは可能なかぎり正中から離して埋入する必要がある。このコンセプトにより、下顎神経に近づくことなく、敏感な前歯部で上部構造が厚ぼったくなることを回避できる。理想的な配置は5-3-3-5である。図1b 図1aに示す理想的な配置は、もし顎堤が「U字形」ではなく「V字形」である場合には4‐2‐2‐4へと修正できる。No図1c どんなことがあってもインプラントどうしを近接させて埋入してはならない。

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