ITI Treatment Guide vol.9
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9章 高齢患者における外科的考慮事項ITI Treatment Guide ・Volume 9138の鑑別診断の一つとして、疲労骨折を考慮するべきである(Rothmanら、1995)。 萎縮下顎骨へのインプラント埋入の適切なインフォームドコンセントには、稀ではあっても重大なリスクに関する警告を含むことが推奨されている(Soehardiら、2010)。下歯槽動脈から下顎骨への血管供給が加齢によって減少することを多くの著者が報告しており(Bradley、1975)、このことが下顎の歯槽骨の萎縮と関連があるのかもしれない(Eisemanら、2005)。しかしながら、隣接する筋肉(咬筋、オトガイ筋、内側翼突筋)の血管や、口底の血管(舌下動脈、顎下動脈、顎舌骨動脈)が骨膜を貫いていて、かなりの副次的な血液供給が存在する。下歯槽動脈からの血液供給の減少は、限局性歯槽骨炎(「ドライソケット」)(Chiapascoら、1993)、抜歯窩の血餅の不足、骨誘導再生法の失敗(Ersanliら、2004)、そして下顎後方部の放射線骨壊死の発生率が高いこと(Brasら、1990)と関連している。高齢者では下顎骨中心性血管の供給効率が低下している可能性があるため、注意深いフラップのデザインと管理が血液供給を保存するために不可欠である。 上顎:さまざまな顎骨吸収様式の分類(LekholmとZarb、1985)によると、上顎の骨吸収のパターンもまた多くの場合、根尖舌側方向に進んでいく。オーバーデンチャーか固定性補綴装置であるかにかかわらず、骨吸収の結果による上顎歯槽骨高径の減少はアーチの形状やインプラントと歯の位置関係に変化を及ぼし、全顎的補綴症例の手術計画において問題となる可能性がある。舌房を侵害せず口腔外組織を適切に支持するため、補綴装置が「ニュートラルゾーン」内に収まるようにするには、咬合面レベルの歯列弓の大きさはおおむね不変でなければならない。しかし、骨頂は根尖舌側方向に吸収していくため、歯槽弓の大きさは徐々に減少していく。このため、より前方に傾斜させてインプラントを埋入させる必要があり、インプラントをより小さい歯槽弓に埋入する場合は、インプラントどうしが近接しすぎる可能性が出てくる。歯槽弓の大きさの違いによる影響は、上顎前方部でより顕著である(図3a~c)。図3a 適正な咬合、発音、口腔外軟組織の支持に必要な歯列弓形態は、口唇と舌の間のニュートラルゾーンにより決定される。A=歯列弓の前後の長さB=歯列弓の後端図3b 咬合面/切縁の位置(青)は不変であるべきだが、軟組織(緑)と歯槽骨頂(橙)は理想的な歯の位置から遠ざかるように根尖舌側方向に吸収する。図3c 第一大臼歯、第一小臼歯、側切歯部に6本のインプラントで再建を行う際の考察をすると、歯の位置やスクリューのアクセスホールは咬合面の高さであるXの位置に必要である。骨頂の吸収が大きくなるにつれて、利用できる骨稜のアーチは小さくなる。これは上顎前歯部でより顕著である。X=理想的な歯の位置(通常のアーチの大きさ)Y=中程度吸収した骨頂Z=重度に吸収した骨頂ABBx咬合面の高さでの大きさ側切歯第一小臼歯第一大臼歯y粘膜の高さでの大きさz骨の高さでの大きさxyz

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