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大臼歯根管の解剖学的形態の特徴 その潮流のなかで日本では2016年度4月より保険診療枠内においてもつぎのような手術用顕微鏡加算が可能となった.別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方厚生局長等に届け出た保険医療機関において,4根管または樋状根に対して歯科用三次元エックス線断層撮影装置および手術用顕微鏡を用いて根管治療を行った場合に,手術用顕微鏡加算として,400点を所定点数に加算する. 4根管性の歯種はほぼ例外なく大臼歯で,その最大根管数であるが,実際に大臼歯において歯科用顕微鏡およびCBCTを用いたとき,臨床的にはどの程度根管の解剖学的特徴を確認できるのであろうか.そこで歯科用顕微鏡およびCBCTを用いた際の大臼歯の臨床的解剖学の特徴と注意するべき点について,過去の文献をもとに体系的にまとめた.図1 大臼歯の解剖学的ランドマーク(Deutsch AS,Musi-kant BL).天蓋の位置=CEJと同じ高さ.A:髄床底の厚み=3mm,E:歯冠長=6mm.F:髄腔の厚み=1.5〜2mm.D:歯冠から髄床底穿孔までの距離=11mm.1 大臼歯の解剖学形態の特徴1) 大臼歯のアクセス窩洞に有用なランドマークの平均値 アクセス窩洞では天蓋の位置は道標として重要である.平均的な天蓋の位置はセメント-エナメル境(以下,CEJと略)とほぼ同じ高さであり,咬頭からCEJまでは6mmとなるが,加齢や刺激により髄床底の位置まで変位する.咬頭から髄床底の距離は約11 mmとなり,6~11mmの位置に髄腔は存在する(図1).ポケット探針やバーの長さを指標にどの程度削合しているのか頻繁に確認しながら切削を進める.髄床底の厚みは約3mmのため,根管探索時にそれ以上削合すると穿孔する.2)大臼歯のアクセス窩洞外形とイメージ 歯髄腔はつねに歯冠の中央に存在するものの,大臼歯では歯軸方向の器具操作は制限され,便宜的に近心に傾いたアプローチになり,アクセス窩洞外形は中心ではなく近心に変位する(図2a).しかしながら,誤りやすいのは窩洞外形に沿って図2bの赤線のように歯軸方向に削合していくと近心にレッジ,穿孔が生じてしまう.最初から窩洞外形に沿って歯軸方向に削合するのではなく,窩洞外形に相似形のひと回り小さい窩洞で削合を進め,髄腔に達したら,図2bの黄線のように外開きに形成して整えることで,最終窩洞外形のようになる.外開きの側壁と髄床底の点角に根管口が位置するようにアクセス窩洞形成および外湾側方向(いわゆるエンド三角)に上部拡大を意識すると側壁に沿わせるだけで器具が根管口から根管中央部まで抵抗なく,容易に到達するようになる.根管口の位置,髄床底と天蓋の判別においては下記のガイドラインが役に立つ.3)根管解剖のガイドライン CEJでの水平断面の観察から根管口の配置が法則性を示すことが記述されている.23別冊the Quintessence 「YEARBOOK 2017」

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