リクッチのエンドドントロジー
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329根管治療の失敗の原因 Chapter  9FIG 9-8 分枝内のバイオフィルム.(a)32歳の女性.上顎前歯部の疼痛とサイナストラクトを訴えて来院した.エックス線写真では,犬歯に対する歯内療法が行われていたことが示され,側切歯の根尖周囲にエックス線透過像が認められた.(b)歯内療法が計画された.器具操作後,根管に水酸化カルシウムによる貼薬を行った.1週間後,依然としてサイナストラクトが認められたため,それが消失するまで2回にわたり計35日間の貼薬を行った.その後,サイナストラクトは消失し,根管を充填した.少量のシーラーが,根尖周囲,根尖と根管中央1/3の間の側枝と思われる部分に,溢出していることに注目.歯冠はコンポジットレジンで復元された.(c)1年8か月後に症状が現れたため,再来院した.サイナストラクトが頬側に再発していた.(d)サイナストラクトにガッタパーチャポイント挿入後エックス線写真を撮影.病変部が著しく増大していることが判明した.(e)根管治療の失敗と判断され,歯根端切除術を行った.全層弁でフラップを剥離し,骨削を行い,病変組織と根尖部を露出させた.病変と根管先端部を本来の位置関係を保つように注意して除去を行った.生検標本の写真では,病理組織表面に凹み(丸く囲まれている部分)を認めた.これは,病変の中央部とサイナストラクトが繋がっている部分と一致する.(f, g)固定液中で丁寧に洗浄し,血液残渣を除去している際,口腔粘膜と病変中心部の間に以前存在していた連結部とみられる領域に,排膿塊を認めた.黄色がかった2つの大きな塊を採取し,脱灰を行わずに別々に処理した.組織学的切片では2つの「菌塊」が認められた(テイラーの改良型ブラウン-ブレン染色法,×50).(h)写真(f)の「菌塊」の中央部の強拡大像(×1000).相互に絡み合い,枝わかれした細菌線維が密集している.(i)写真(f)の「菌塊」の周囲.細菌の線維が高密度で凝集し,非晶質の層で囲まれている.外側表面に多形核白血球の凝集がみられ,一部は細菌の細胞質基質と密着している(×400,×1000).(j)主根管を通過しているが根尖孔は含んでいない切片.分枝がいくつか認められる(×16).(k)写真(j)の切片から約40枚目の切片.主根管と2つの大きな分枝の出口周囲.分枝は,根尖周囲炎病変の空洞部に明らかにつながっている(×16).(l)写真(k)の2つの分枝の詳細.内腔は厚いバイオフィルムで覆われている(×100).(m)写真(l)の矢印で示されている分枝壁の拡大像(×400).象牙質壁上の細菌は中心部よりも密集している.(Ricucci, Siqueira24から許可を得て修正)kjlm

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