歯科衛生士のための臨床歯周病学のエビデンス活用BOOK
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 今回ご紹介したのは、細菌性プラークによって歯肉炎が発症し、プラーク除去によって歯肉炎が治癒することを「実験的歯肉炎」という手法を用いて証明した重要な論文です。臨床研究の手法が確立されている現在の視点からこの論文を見ると、「対照群がない」「観察期間が被験者によってバラバラである」など、突っ込みどころは多いです。また、現在であれば、実験開始前にブラッシング指導や歯面清掃などを繰り返し行い、歯肉炎指数を最小限にし、プラークスコアを0にした状態から実験を行うでしょう。データの解析法や統計処理などにも一考の余地があります。しかし、細菌性プラークが歯肉炎の発症にかかわることが証明された!今でこそあたりまえのように浸透している「歯周病の原因はプラーク」という根拠は、この研究を境に認知されていきました。この結果をふまえ、もう少し解説します。研究の手法が不十分ではあるものの、得られた結果は現在も通用するPoint 1多少のバイアスがデータに入っていたとしても、プラークが蓄積することでプラークの細菌叢が変化し、それにともない歯肉炎が発症、悪化していく過程がヒトにおいて最初に観察された貴重な研究です。 この実験モデルは、後に他の研究者によって、洗口剤等のプラーク抑制効果等を調査する目的でより洗練された形で使用されています。もちろん、プラークが歯肉炎の原因で、プラークコントロールによりそれが改善されるというコンセプトは現在でも通用しますし、疑いようがありません。解説 歯周疾患の発症や治癒期間には個体差があります。今回の被験者においても、10日で明らかな炎症がみられた人がいる一方で、21日かかった個人の感受性には違いがあることに注意!Point 2人もいます。歯肉炎のみならず、歯周炎についても、個人の感受性に違いがあることを認識しておかなければいけません。20

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