インプラント周囲炎とレーザー
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109CHAPTER 6 インプラント周囲粘膜炎・周囲炎のレーザー治療テクニック歯周炎に比べ,インプラント周囲炎は骨組織への炎症が急速に進むと考えられている.早期において,エックス線写真上で骨の透過像を呈していても,インプラント粗造面の感染にまで達していない可能性がある.インプラント周囲炎の分類・診断において,エックス線写真検査による骨欠損像の発現の時期は,治療方針を決定するうえできわめて重要である.このような早期の発見においては,治療はインプラント周囲粘膜炎の治療に準じ,外科的処置が回避される可能性がある.6-2-3レーザーを用いたインプラント周囲炎の治療正常なインプラント体の粗造面は骨に覆われているが,弱圧のプロービングでプローブ先端でインプラント体粗造面が触知された場合,インプラント周囲溝が汚染され,炎症によりオッセオインテグレーションが部分的に失われたインプラント周囲炎であると診断される(図2).前述のようにデンタルエックス線の骨透過像は,必ずしも実質欠損を示すわけではないので,注意が必要である.出血・排膿があり,プローブ先端がインプラント粗造面に触知し,インプラント体の動揺がなく,除去の適応でない場合,外科的切除療法あるいは再生療法も含めた治療が行われる.インプラント体粗造面に感染が疑われる場合の第一選択は,外科的処置による目視下での処置である1.6-2-4レーザーを用いたインプラント周囲炎治療の術式切除療法か? 再生療法か? 併用療法か?検査によりインプラント体粗造面に感染があり,骨の欠損が明らかな場合,外科的処置によりインプラント体の殺菌,骨整形などを行う.粘膜および骨欠損の状態に応じて切除療法・再生療法,あるいは併用療法を決定する.歯周外科処置に比べ,インプラント周囲炎の外科処置は,インプラント体に生理的動揺がない,隣在歯への炎症の波及が比較的少なく単独骨欠損の様相を呈する場合が多い,術後に閉鎖創にしやすい,などの理由で骨再生療法が適している.しかしながら,期待できる組織の回復の程度により,汚染された骨縁上のインプラント体粗造面を機械的研磨した後,口腔内に露出させ,周囲溝の深さを減じる切除療法も選択肢となる.切除療法の場合,骨整形量が多くなることから,術後の上部構造の形態と清掃性に苦慮する,インプラント体撤去後の再治療時に骨量が不足する,図2 図1と同症例.インプラント周囲歯肉に発赤・腫脹がみられないにもかかわらず,プロービング時に出血・排膿がある.プローブ先端でインプラント体粗造面が触知された.

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