インプラント周囲炎とレーザー
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110PART 4 インプラント周囲炎へのレーザーの応用などの問題点もある.そのため,切除療法と再生療法の併用が試みられる場合もある.①術式についてインフォームドコンセントを得るレーザーを使用する利点と他の方法を提示,同意を得て同意書を作成.②超音波のナイロンブラシやフロスなどを用いて口腔内・インプラント上部構造の,プラーク・バイオフィルムの除去を行うプラーク・バイオフィルム(歯垢)を明視化する染色液の使用は,的確な術前処置を行うのに有効である.術野および周囲組織は,薬液で殺菌消毒しておく.③麻酔下でインプラント体と骨欠損部位を明示する粘膜弁の止血効果,リンパ液の凝固による術後の腫脹の軽減,術野の殺菌効果など,切開にレーザーを使用する利点を挙げる向きもあるが,術後の確実な粘膜弁閉鎖のために縫合を要するため,切開にレーザーを用いる必要はない.外科用メスを用いて切開を行う(図3).④レーザーを用いた肉芽の除去手用器具を用いて可及的に肉芽の除去を行う.骨に入り込んだ肉芽はEr: YAGレーザーで注水下にて精密に蒸散することが可能である.他の波長のレーザーの使用は,骨の熱によるダメージを考えると,使用は推奨できない.Er: YAGレーザーは注水下で使用する.骨面肉芽除去には20Hz,40mJ(パネル表示)程度を用いるが,骨整形を行う場合には20Hz,80mJ(パネル表示)程度を用いることが多い.ただし,十分な注水下であれば,切削効率を上げるために出力を上げてもよい.先端チップの形状に制限はないが,ニアコンタクト(非接触)での照射を心がけることで,骨の熱ダメージを軽減する.⑤レーザーを用いたインプラント体のデブライドメント炭酸ガスレーザーを用いて,インプラント体に付着したデブリス(デブリ,壊死組織片)を除去するデブライドメントを行なったという症例報告もあるが,レーザーを用いたインプラント体表面に付着した歯石・バイオフィルム・プラークなどの除去には,炭酸ガスレーザーではなく,Er: YAGレーザーを使用する2,3(図4).図3 図1,2と同症例.外科用メスを用いて切開を行い,粘膜弁を形成.肉芽を手用器具で除去した.術後に縫合を要する切開にレーザーを使用する根拠もメリットもない.図4 レーザーを用いたインプラント体のデブライドメントにはEr: YAGレーザーを使用する.術野の視覚性を疎外するので,ガイド光は使用しない.他の波長のレーザーは使用できない.他の波長のレーザーの使用は低出力での殺菌に限定される.

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