インプラント周囲炎とレーザー
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111CHAPTER 6 インプラント周囲粘膜炎・周囲炎のレーザー治療テクニック適正パラメータ下での光蒸散によるデブライドメントは,機械的なデブライドメントに比べ,インプラント体粗造面の破壊が皆無である利点がある(図5,6).また,機械的なデブライドメントはブラシなどの太さ以下の隙間の清掃が困難であるが,レーザーは光なのでナノメーター単位の隙間にも作用する.光は反射し,凹凸のアンダーカットにも届く可能性がある.また,パルス波であるEr: YAGレーザーのパルス波の衝撃が微細な振動を起こし,粗造面に付着した汚染物を震盪剥離する可能性も考えられる(図7,8).十分な注水下で20Hz,50mJ(パネル表示)以下の出力であればインプラント体表面に変性を起こさない4.ちなみに,10Hz,100mJの出力は20Hz,50mJと同じ1Wの出力であるが,100mJのエネルギーではインプラント体に変性を起こす可能性が出てくる.エネルギー(あるいはエネルギー密度)を高くしないことが肝要であ図5 他医院でメインテナンスされている口腔内.上顎犬歯部補綴修復物の脱離で来院.メタルセラミッククラウン,金修復,インプラント修復など,自費治療のみで治療が行われている.図6 図5と同症例の下顎第一大臼歯部の拡大像.インプラント体に超音波スケーラーによると思われる多数の傷が観察される.歯肉は退縮しており,付着歯肉もないが,際立った炎症はみられない.ただし,インプラント体のメインテナンスで超音波スケーラーの使用は十分な注意が必要である.図7 Er: YAGレーザーを用いたインプラント体のデブライドメント前の拡大像.インプラント体に歯石やプラークのデブリス(デブリ)が観察される.図8 Er: YAGレーザーを用いたインプラント体のデブライドメント後の拡大像.保護ゴーグル着用の下,ルーペやマイクロスコープを用いて術野を観察することは有用である.

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