生体にやさしい戦略的矯正歯科治療歯科矯正用アンカースクリューの応用
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163歯科矯正用アンカースクリューを用いた矯正歯科治療SECTION3 1.生物学的背景  MischⅢ-1は骨を密度によってD1~D4に分類した(表10-1)。D1が最も密度が高く、D4が最も密度が低い。単位はHU(Hounseld unit)を使用しており、これは蒸留水をエックス線撮影したときの放射線吸収率を0とし、それに比べて相対的吸収率を比較することにより、相対的密度を計算する。すると、空気は-1000HU、筋肉は40HU程度になる(図10-1)。 口腔顎顔面は多様な骨質の骨で構成されており、硬い骨もあれば、軟らかい骨もある。D1は下顎前歯部、レトロモラーパッド(臼後三角)、正中口蓋部である。頬側から見ると、上顎の場合は前歯部(D2)から臼歯部 歯科矯正用アンカースクリューは、矯正歯科治療中に起こりうるさまざまな問題を解決するためだけでなく、より理想的な治療結果を得るためにも使用されている。(D3)へ進むと骨が軟らかくなるが、下顎の場合は前歯部を除いて臼歯部から後方へ進むほど、骨が硬くなる。したがって、上顎結節は最も軟らかい骨であり、レトロモラーパッドは最も硬い骨と考えられる。同じ口腔顎顔面領域であるが、上顎結節とレトロモラーパッドの骨密度には4倍以上の差がある(図10-2)。 HUの数値が低いからといってアンカースクリューを利用できないわけではなく、安定性の面で不利なため、より太いアンカースクリューを使用し、初期固定を安定させなければならない。イラスト書き直す?転載許可、必要?表10-1 Mischの骨密度分類(classication of bone density)Ⅲ-1骨質(ハンスフィールド値:HU)特 徴D1(>1,250)・大部分が皮質骨・埋入するときの感触はカシ材またはカエデ材・10段階評価で9~10の骨強度・下顎前歯部、正中口蓋部とレトロモラーパッドにみられるD2(850~1,250)・皮質骨と骨梁の粗な海綿骨が歯槽頂に厚い層を形成している・埋入するときの感触はホワイトパイン材またはスプルース材・10段階評価で7~8の骨強度・下顎骨全体および上顎前歯部にみられるD3(350~850)・歯槽頂部の皮質骨層が薄く、海綿骨骨梁が細い・埋入するときの感触はバルサ材・10段階評価で3~4の骨強度(D2の50%程度)・主に下顎臼歯部または上顎にみられるD4(150~350)・大部分が骨梁の細い海綿骨・ドリル使用時の感触は発泡スチロール・10段階評価で1~2の骨強度・主に上顎結節にみられるD1D2/D3D4D1D3D2D3D4D3D1/D2(文献Ⅲ-2より引用改変)

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