口腔外科医のための口腔外科ハンドマニュアル’ 17
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PARADIGM SHIFT OF DENTAL SURGERY FOR 10YEARS LATER特集1歯科・口腔外科における再建治療の可能性Chapter-特集2高齢者に対する歯科・口腔外科治療の“かんどころ”2)挺子抜歯 くさび作用と輪軸作用の運動により抜歯を行う.くさび作用においては挺子のツノ部を歯根膜腔に挿入し,これを根尖方向に押し進めると,歯槽骨の弾力のため,その側の歯根膜腔が拡大し,歯根膜線維は断裂する.また輪軸作用は,くさびのように挿入した挺子のツノ部を左右に回転させることにより,歯根を歯槽骨内でゆさぶり,歯根膜線維を断裂させるもので,主として円錐形の歯根に対して用いられる12.これが挺子抜歯の基本であるが,加齢現象により歯根膜腔が狭小になり歯槽骨は弾力を失うため,通常の挺子のツノ部がより細いもの(ファインヘーベル,図1)をまずは使用し,ある程度歯根膜腔が拡大したら通常の挺子を通常のように使用する.また歯槽骨の弾力がないことより,鉗子で把持できるのであればそれで把持し,輪軸に動かし抜歯する.複根の場合は歯根を分割し単根にしてから同様に抜歯する.高齢者の抜歯における丁寧な対応ATLAS1)歯槽骨への丁寧な対応 加齢により歯根膜腔の狭小,歯槽骨の弾力性の消失により,挺子はツノ部が通常より細い物を使用し,歯根膜腔が拡大できたら通常の太さの挺子を使用する(図2).また,とくに唇側骨の薄い部位においては,歯槽骨を破損することなくツノ部の細い挺子のみを使用する(図3).[症例1]ツノ部の細い挺子と鉗子を用いた1残根の抜歯処置 78歳,男性 (図3)図3d 少し歯に動揺を認めたら鉗子にて把持し,歯軸を中心とした回転運動を行い,可及的に唇側方向には負荷を与えないようにし抜歯する.図3e 抜歯窩の状態.de図3a ₁残根のパノラマエックス線画像所見.図3b 口腔内所見.図3c ファインへーベルにて近心および遠心隅角部を交互に挿入し,くさび作用にて脱臼を試みる.図1 通常のへーベル(a)と細いファインへーベル(b).図2 ツノ部の比較.2ab1ab7070

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